
2025/06/06
【格闘メディア企画 ーこの試合に何を想う-】 久井大夢 vs 龍聖
6・22国立代々木競技場第二体育館
「打撃格闘技の最高峰を体現する」KNOCK OUTのビッグマッチ『THE KNOCK OUT』
4大タイトルマッチを含む超注目試合をより楽しんでいただくため
名だたる格闘メディアにコラム執筆を依頼、
第1弾はGONG格闘技 熊久保英幸氏のコラムを公開!
熊久保英幸氏には
KNOCK OUT-BLACK スーパーフェザー級タイトルマッチ
「久井大夢 vs 龍聖」がどう映るのか。是非ご覧ください。
【宿敵との言葉にふさわしい宿命の対決は、今度は“もしも”はない真の決着戦】
「宿敵」と書いて「ライバル」と読む。キックボクシングに限らず格闘技、いや他のスポーツや多くのジャンルにおいてライバルと呼ばれる2人が数多く存在した。ライバルとは何か。その相手を超えなければ自分が一番であることを証明できない存在であり、そのためにお互いを高め合う存在でもある。
一発勝負で雌雄を決する、例えば宮本武蔵と佐々木小次郎や那須川天心と武尊のようなライバルもいるが、多くのライバルは2度、3度と戦う。格闘技の場合、同じ時代に生まれ、同じ階級で戦っている以上、常に比べられどっちが強いんだとその答えを求められる。不思議なことに、格闘技は1対1の戦いなのだから必ずその状況なのだが、周囲からライバルと見られる2人が生まれてくるのだ。
再戦したからと言って、その2人がライバルだとはならない。やはり、「宿敵」との言葉にふさわしいような宿命の対決だと感じさせる“何か”がなければライバルとはならないのである。
久井と龍聖はまさにライバルだ。KNOCK OUTで育ち(龍聖は統合されたREBELSから)、KNOCK OUTのチャンピオンとなり、同じ階級にいる。もし久井がRED専門だったのなら、2人はREDとBLACKの両翼としてKNOCK OUTの2大エースとなっていただろう。ところが、久井はBLACKでも戦える。そうなればどちらが強いのかを求められるのは必然。
昨年6月、龍聖の対戦相手である山田彪太朗の欠場により、2人の対戦は急遽決まった。KNOCK OUTの切り札とも言えるカードをここで切ってしまうのか、もっと2人が成長してから頂上対決として組んだ方が良かったのに、ここで実現してしまうのはもったいない、と当初は思った。しかし、宿命の対決とはそういうものなのかもしれない。
試合は、1Rに久井が龍聖から2度のダウンを奪う波乱の展開から幕を開けた。絶体絶命のピンチを乗り切った龍聖は2Rから逆襲を開始。鬼神の如く逆転を狙って攻め続け、3Rにはあわや逆転かと思われる展開もあったが、久井は倒れず。判定勝ちで龍聖に18戦目にして初黒星を付けた。この展開に「久井は逃げた」との意見もあったが、そうではない。「攻防」という言葉があるように、龍聖の“攻”に対して久井は“防”で立ち向かったのである。もしここに防御のテクニックがなかったなら、久井は龍聖の猛攻に倒されていただろう。逆転を狙って最後まで攻め続けた龍聖はあっぱれだが、逆転を許さなかった久井もまたあっぱれなのだ。
この初対決がドラマチックなのは、両者とも準備万端で戦ったわけではないところ。もしも、最初から両者の対戦が決まっていて、2人がその試合へ向けて準備を進めていたならば、また違った展開になったのではないかと思わせてくれたところが、今回の再戦がより楽しみになったファクターのひとつである。敗れた龍聖はすぐにリベンジを誓い、勝った久井も「もう一度ある」と思っていたという。そういう意味では、今回の再戦が真の決着戦ということになる。今度は“もしも”はない。
初対決から1年、久井はその間のKNOCK OUTを間違いなくけん引してきた。1年前の初対決の時とはポジションが大きく違っている。龍聖もまた、連敗すれば失うものが多い。背負っているものが大きければ大きいほど、失うものが多ければ多いほど、その一戦の価値は上がる。格闘技とは残酷なものだ。勝者が全てを手に入れ、敗者は全てを失う。それが明確だからこそ我々は興味を惹きつけられる。
かつての格闘技におけるライバル対決は、それを見た人々の記憶に残り、語り継がれている。この一戦もきっとそうなるに違いない。
執筆
GONG格闘技
熊久保 英幸