2025/06/20

THE KNOCK OUT|高塩竜司 インタビュー公開!

 

 

 

 

 

「今の自分には格闘技しかない。だから絶対に勝ちます!」

 

 

6・22「THE KNOCK OUT」の[KNOCK OUT-UNLIMITED -67.0kg契約/3分3R]で木下カラテと対戦する高塩竜司。3月、常葉での「KRS.1」で初のUNLIMITED参戦を果たした高塩が、第2戦に臨む。当初予定された相手の負傷欠場により、相手はRIZINにも出場する木下カラテに変更となり、モチベーションがかなり上がったという高塩。彼の意気込みと、壮絶な経歴とは?

 

 

 

 

 

──3月には常葉で、木村亮彦選手とUNLIMITEDで対戦しました。あの試合を振り返ると?

 

高塩 正直、グラウンドになった時にもう少しブレイクまでの時間を見てもらえるかと思っていたので、試合中に、ブレイクがものすごく早くなったんだなとは思いました。思い通りの展開にならなかったというか、相手の打撃のペースに合わせてしまった印象ですね。

 

──MMAの試合とどういう違いがありましたか?

 

高塩 やっぱり距離感が違いましたね。MMAの距離感でもなく、キックのとも違って、完全に別物なんだなと思いました。グラウンドのブレイクが早くて、かと言って立ちで打ち合ってしまうとローキックなどをもらわないようにする駆け引きが難しかったです。ただ、1試合やって得られたことは大きかったですね。

 

 

 

──そして今回は、当初対戦予定だった相手が欠場となり、代わりに木下カラテ選手がやってきました。これには驚いたのでは?

 

高塩 もちろん知っている選手だったので、UNLIMITEDでやるのかー、とは思いました(笑)。打撃がものすごく強い選手で、特に蹴り技が多彩なイメージがあるので、パンチよりも蹴りに警戒しています。

 

──その上で、どう攻めていきたいと思っていますか?

 

高塩 自分はキレイに戦おうとすると後手に回って相手にペースを握られてしまうという傾向があるので、自分から仕掛けてバチバチに行きたいと思っています。

 

──木下選手は、前回の木村選手よりもMMAのキャリアが豊富です。そこだけでも気をつけるところはだいぶ違いますよね?

 

高塩 そうですね、完全に別競技だと思っているので。MMAだとサブミッションに警戒が必要ですが、それがない分、離れ際の打撃に注意が必要になりますね。MMAで木下選手と戦うのとも展開が変わってくるので、完全にUNLIMITEDを想定しての練習をやってきました。

 

──その練習は、所属のKIBAマーシャルアーツクラブのみでやっているんですか?

 

高塩 KIBAでもやっていますし、5月からはKNOCK OUTクロスポイント吉祥寺にも行かせてもらって、栗秋祥梧選手とか、KRAZY BEEの選手とかとも練習しました。あとキックのプロ練習にも参加させてもらって、いろいろと自分に変化を加えて次の試合に臨もうとしています。

 

──それはこの試合に向けて?

 

高塩 それもありますが、自分は年齢に比べると技術的に備わっていないなというところがあって、最後のチャンスにかけたいなという思いがあって、環境を変えるために出稽古をかなり増やした感じですね。

 

──最終的にはどう勝ちたいですか?

 

高塩 絶対キレイな試合では終わらないと思ってるんですよ。かなりボコボコに殴られ、蹴られると思ってるんですけど、それでも3分3R終わった時点では勝ってるというような、泥臭い形でもいいから勝ちたいと思っています。

 

──ある程度、捨て身の覚悟で?

 

高塩 そうですね。打撃はかなりもらうけれども、勝つのは自分、という展開を予想しています。今までもキレイに戦おうとしている時ほどうまく行っていないので、反則以外なら何でも使おうという精神で臨みたいです。

 

──これがKNOCK OUT、そしてUNLIMITEDで2戦目になります。今後はやはり、MMAの方でキャリアを積みたい?

 

高塩 チャンスがあればどこでも食いつきたいというのが本心です。今回もUNLIMITEDでチャンスをいただいているので、自分の階級でもベルトを作っていただけるのであれば狙っていきたいです。今回木下選手に勝つようなことがあれば、それを言えるようになると思うので、勝って要望したいと思います。

 

──今大会ではスーパーフェザー級のタイトルが新設されるので、そこまで遠い話でもないですしね。

 

高塩 はい。でも自分は実績が伴ってないところがあるので、タイトルを作ってもらってもその候補には入らないと思うんです。だから結果をもって発言したいなと思います。

 

──ところで、試合の話からは外れるんですが……高塩選手は少年時代の境遇が壮絶という話を小耳に挟みまして、もし差し支えなければ……。

 

高塩 小耳に挟みましたか(笑)。私は兄弟がものすごく多くて、まず父親がバツ2なんですよ。血のつながった兄弟が、全部で9人いるんですけど。

 

──9人!

 

高塩 一番最初の母親との間に兄と姉と私が生まれて3人、それから2番目の母親との間に2人、そして生みの母が別の人と再婚して4人生まれたので、3+2+4で合わせて9人ですね。それがスタートで、自分を含めて上3人が2番目の母とうまく行かなくて、だんだんと母から自分たちへの虐待がエスカレートして。今はもう縁を切ってしまっているので、会うことはないんですけど。

 

──そうですか……。

 

高塩 私はもう縁を切っているので会うことはないんですけど、兄と姉はまだ彼女と交流があるみたいで。私は高2の夏ぐらいから家にいられなくなってしまったので、祖母の家に住むようになって、祖母が母親代わりみたいな感じで、「シンデレラ」みたいなことになってました(笑)。

 

──その「虐待」というのは?

 

高塩 まず、ごはんのメニューが違うとかですね。彼女にとって実の子である下2人とは、メニューが全然違って、同じものは食べさせてもらえませんでした。あと、高校の時にお弁当代といってお金を渡されるんですけど、1日分が200円とかなんですよ。さらにそのお金をどう使っているか監視するために、必ずレシートを出しなさいと言われて。

 

──200円で、ですか。しかも食べ盛りの高校生に。

 

高塩 はい。私は強豪校の柔道部に所属していたので、部活もあってさらに腹が減るんですよね。だからその200円をどう使ったら腹いっぱいになるかというのを考えてました。学校の近くに24時間営業のスーパーがあって、朝練の前に自転車でそこに行くと、当時は8つ切りの食パンが100円とかで売ってたんですよ。しかも時間によっては半額になっていて、50円になってて。それとコロッケ5個入り100円というのを買って、残りの50円でうまい棒を買ったりしてました(笑)。

 

──それはキツいですね……。

 

高塩 たぶんですけど、ごはんを食べてないとなると、学校で問題にされちゃうじゃないですか。そうならないようにギリギリのラインを攻めていたんだと思います。

 

──いや、それはギリギリをかなり越えてますよ!

 

高塩 そうなんですけどね(笑)。私も柔道部の仲間とかには少し話してたんですけど、言うても親なので、「あまり自分が言うと、親が悪く言われる」というのがすごくイヤで。自分のせいでそうなるのがイヤで、先生とかには相談できなかったんです。

 

──そういう話はよく聞きますが……。

 

高塩 ごはんのメニューが違うというのは、中学ぐらいからはけっこうあったので、中学の給食がメッチャ好きだったんです。おかわりしなかった日はなくて、給食はメチャクチャ食べてました(笑)。今だから笑えますけど、当時は笑えなかったですね。

 

──そうですか……。

 

高塩 それがあったから、精神的な面では強くなれたかなと思うんですよね。他の格闘家について「壮絶人生!」とかって密着取材している動画を見たことがあるんですけど、「この程度だったら、私の方が……」みたいに、勝手に対抗心を持っちゃったりして(笑)。『“It”と呼ばれた子』っていう、虐待児童の体験記の本があるんですけど、その本にすごく救われました。読んだ時に、「俺はまだ全然恵まれてんじゃん!」と思ったんですよね(笑)。世界を見たら全くごはんを食べさせてもらえない子がいる中で、200円もらえているんだから全然マシだ、と。

 

──いやいやいや。しかし、そこからよくMMAでプロとして活動するまでになれましたね。

 

高塩 でも、けっこう親不孝者ですよ。一度は警察官になったんですけど、「格闘技をやるためにやめて東京に行く」って言ったら、祖母とか泣いてましたから(笑)。今は応援してくれてますけどね。

 

──お祖母さんからすれば、安定した職に就けたのに……というところですよね。でも夢を捨てられなかったと。

 

高塩 だから私は、そうやって経験したことからも、普通に生活してきた人たちに負けたくないというのがあるんですよ。今は、自分が心の底からやりたいと思ったことを自由にできている状況なので、勝たなきゃいけないなと思いますね。

 

──そういう中で、今回は代々木第二というビッグマッチですしね。

 

高塩 本当に、前回負けたにもかかわらずこういうチャンスをいただけて、感謝しかないです。しかも相手が木下選手というネームバリューのある選手になって、注目度もかなり上がったと思うので、このチャンスは本当にものにしたいです。しかも、去年離婚したんですよ。

 

──そうなんですか!

 

高塩 子供も2人いたんですけど、母親の方に行っちゃったので、今の自分には本当に格闘技しかないんです。だから絶対に、何としてでもチャンピオンになりたいです。

 

──なってください!

 

高塩 はい!(笑) 私も自分のことを包み隠さず出したいなと思っていたので、いい機会でした。こんな自分の話を読んで、誰かの力になれればと思いますし。

 

──では最後に、今回の試合で一番注目してほしいポイントはどこでしょう?

 

高塩 本物の格闘技を絶対に見せます。格闘技は僕の生き様だと思っていて、それを表現するので、そこに注目してほしいです。

 

──分かりました。ありがとうございました!

 

 

プロフィール
高塩 竜司
所属:KIBAマーシャルアーツクラブ

生年月日:1995年10月24日
出身:栃木県大田原市
身長:172cm
MMA戦績:27戦10勝(5KO)15敗2分
UNLIMITED戦績:1戦1敗

DEEPフューチャーキングトーナメント2015ライト級優勝