2025/06/09

【格闘メディア企画 ーこの試合に何を想う-】 軍司泰斗 vs ペットルンルアン・ソーチャールワン

 

6・22国立代々木競技場第二体育館
「打撃格闘技の最高峰を体現する」KNOCK OUTのビッグマッチ『THE KNOCK OUT』

 

4大タイトルマッチを含む超注目試合をより楽しんでいただくため
名だたる格闘メディアにコラム執筆を依頼、
本企画の最後はフリーライター 中村拓己氏のコラムを公開!

 

KNOCK OUTに電撃参戦を発表した前K-1フェザー級王者の軍司泰斗の初陣、
中村拓己氏には
KNOCK OUT-RED 59kg契約
「軍司泰斗 vs ペットルンルアン・ソーチャールワン」がどう映るのか。是非ご覧ください。

 

 

 

軍司泰斗が足を踏み入れたOFGムエタイは茨の道。圧倒的不利な元ラジャダムナン王者との一戦を乗り越えられるか?

 

 

 

 

 昨年に続いて開催されるKNOCK OUT夏のビッグマッチ、国立代々木競技場第二体育館大会。久井大夢vs龍聖のKNOCK OUT-BLACK スーパーフェザー級タイトルマッチを筆頭に4つのタイトルマッチが並ぶ豪華ラインナップのなか、最大のサプライズは前K-1フェザー級王者・軍司泰斗のKNOCK OUT参戦だろう。

 

 

 軍司は第3回K-1アマチュア全日本大会優勝の実績をひっさげて、2015年にKrushでプロデビュー。2016年にK-1甲子園優勝を果たすと、2017年にはKrushバンタム級王座も戴冠。2021年に椿原龍矢を下してK-1フェザー級王者となり、翌2022年には現役王者としてK-1フェザー級世界最強決定トーナメントを制し、K-1に存在するプロ・アマすべてのタイトルを獲得する偉業を成し遂げた。

 

 まさにK-1を象徴する選手となった軍司だが、2025年4月30日付けでK-1とのファイト契約にピリオドを打ち、新たな戦い場としてKNOCK OUTを選択した。軍司がKNOCK OUT参戦を決めた理由はOFGのムエタイルールにチャレンジし、ONEムエタイを目指すため。KNOCK OUTが国内の立ち技団体としてOFGのムエタイルール=REDルールを採用していることが選択の決め手になったという。

 

 

 ヒジ&首相撲が禁止されたK-1・キックルールとヒジ&首相撲が認められたムエタイルールは同じ立ち技でも全く異なり、別競技と言っても過言ではない。K-1・キックルールでKOを量産するファイターがムエタイルールでタイ人にヒジで切られる・首相撲でコントロールされて負ける姿を見たことがある人も多いだろう。

 

 対戦相手のペットルンルアン・ソーチャールワンは2022年にムエタイの二大殿堂と言われるラジャダムナンスタジアムのフェザー級王者となり、同年のRWS(ラジャダムナン・ワールド・シリーズ)フェザー級トーナメントでは準優勝している現役バリバリのムエタイのトップ選手。ファイトスタイル的にもヒジと首相撲からのヒザ蹴りを得意としており、ザ・ムエタイという試合をするファイターだ。

 

 一方、軍司はアマチュア時代から基本的にK-1ルールでしか戦っておらず、ヒジ打ちも首相撲もどちらも未経験。ムエタイスキルにおいて軍司は完全なルーキーで、ペットルンルアンとは雲泥の差がある。しかも相手がパンチ主体で打ち合うタイプであれば軍司にも勝機はあるが、ペットルンルアンのようにヒジ・首相撲が武器で打ち合わないタイプは軍司にとって相性は最悪。軍司が持ち味を発揮できず、完封されてもおかしくない相手だ。

 

 

 当初軍司の相手には第一線を退いた在日タイ人やファイトスタイルが噛み合うタイ人、また日本人選手も候補に挙がっていたが、軍司自身が「昔から僕は強い選手としかやりたくない。ムエタイデビュー戦で弱い選手でもよかったと思うけど、あえてムエタイらしい首相撲の選手とやって勝つことで、これからの自信につながると思う」とペットルンルアンを希望したという。

 

 武尊や野杁正明などK-1からONEに移籍した選手たちはキックルールで試合を続けており、軍司と同タイミングでK-1との契約解除を発表した玖村将史もRISEに参戦。元K-1のチャンピオンクラスのファイターがヒジ&首相撲ありのムエタイルールで戦うことは異例で、過去に類を見ないチャレンジだ。KNOCK OUT山口元気代表はOFGムエタイの戦いを格闘ロマンと例えた。格闘家・軍司泰斗の新章は、茨の道であると同時に軍司にしかできない格闘ロマンを追い求める戦いでもある。

 

執筆
フリーライター

松井 孝夫