2021/07/02
7.18 KNOCK OUT 2021 vol.3|松倉信太郎インタビュー公開!
「終わった後に『あの選手がすごかった』と思われる勝ち方を」
7・18『KNOCK OUT 2021 vol.3』の「初代KNOCK OUT-BLACK スーパーミドル級王座決定トーナメント 決勝/3分3R・延長1R」で、田村聖と対戦する松倉信太郎。スーパーミドル級という階級そのものが、松倉の発言が発端となって新設されたという経緯があるだけに、彼のこの王座にかける思いは強い。それが当日の試合にどう表れるのか? そして王座を獲得して、彼が実現したいと思っていることとは?
-- まずは3月の準決勝を振り返っていただきたいんですが、渡慶次幸平戦は異種格闘技戦のような緊張感のある戦いでした。
松倉 そうですねえ……。去年WPMFのタイトルを獲って、いろんなルール、いろんなタイトルがある中で、僕個人としてできることは、ベルトを持ってる人を倒していくことで結果になっていくのかなあという思いがあったんですね。その中でラウェイのチャンピオンとやれるということで、すごくうれしかったし、トーナメントとしてもチャンピオンが集まった方が価値が上がるので、その意味では試合ができてすごくうれしかったというのはありますね。試合に関しては、腹をくくった渡慶次選手に、気持ちの面で僕が呑まれたというのはありました。75kg、スーパーミドル級という新階級を作るにあたって、一発当たったら倒れるという、予測のできない部分が魅力のひとつだと思っているので、それが体現できた試合ではあったのかなと思います。
-- その言葉や口調からすると、ご自分の試合内容についてはあまり納得いってなさそうですね。
松倉 僕自身は、もらってしまったということもありますから。個人的に最近、勝敗って運の要素が大きいのかなと思うんですよ。あの試合は、たまたま僕が倒れなくて、たまたま渡慶次選手が倒れただけなのかなと。ただ、この先も僕が勝つ側にいるということは変わらないし、そこは譲らないですけど、かと言って僕が圧倒的に勝ったとは全然思ってないし、次にやったらどうなるか分からないし。でも僕に求められてるのは「1回目に勝つこと」だと思うので、そういう点ではよかったですけど、内容としてはよくはなかったかなと思ってます。
-- そういう中で今回は決勝戦ですが、相手の田村聖選手の準決勝はどう見られましたか?
松倉 当日は僕の前の試合だったので、控えている時に大きな歓声が聞こえてきたのが分かった程度だったんですよ。それで「どっちが勝ったの?」ってチラッと見たりして。でもトーナメントのもう一つの試合がKOで終わったことで、僕もKOしなきゃという思いは強くなりました。細かい内容は後から映像で確認したんですが、田村選手は映像とかで見るよりもすごく強い選手だなと思いましたね。パンチとローキックが強くて、体が強くて、ローもスネでヒザを蹴るぐらいの、普通だったら蹴れないようなところを蹴れる強さを持ってて。パンチも一発一発フルスイングで、固いパンチを打つんだなと思いました。とにかく攻撃力があるんだなというのは、見ていて伝わりました。
-- その相手と、決勝ではどう戦いますか?
松倉 僕も田村選手も倒せる選手だと思うので、当たった方が勝つし、当てられた方が倒れるという試合になると思います。よく「倒すか倒されるか」って言いますけど、客観的に見ても、どっちの攻撃が当たっても倒れるなとは思いますね。田村選手も前の試合でダウンしてるし、僕もダウン寸前までなったので、そういう駆け引きが見られる試合になるんじゃないかなと思います。
-- ただ、最後はもちろん自分のKOで終わりたいですよね?
松倉 そうですね、それはもちろん意識してることですけど、フタを開けたら倒れているというのが自然なことというか。意識しないでも、必然的にKOになるだろうなと思いますね。
-- トーナメント以前から、松倉選手はこの階級を作って自分が頂点に立つことを自分に課していたことが、言葉の端々から感じられました。
松倉 僕はずっと70kgでやってましたけど負けることも多くて、自分の中では体重の部分が引っかかってたんです。「75kgだったら世界で戦えるんじゃないか」と。でも、その階級がないから70kgでやろうという、普通の考え方をしてたんですね。ただ後から、その考え方の時点で弱かったなとすごく思うようになって。階級がないから諦めるんじゃなくて、自分で作っていかないといけないんだなとすごく感じたんです。新しい階級を作るには、過去の63kgとかみたいに求心的な選手がいないとできないだろうし、逆にそういう選手がいれば、周辺の階級の選手もそこに集まってくると思うし。それと、『KNOCK OUT』がこれからもっと大きくなっていく中で、これからもっとたくさんの選手を集めていくことができたら、もっと盛り上がっていくだろうなと思っていて、そこはすごく意識していますね。
-- この階級への期待感には、実績も知名度もある松倉選手が中心になっているからこそ、という部分も感じます。
松倉 僕はここまでたくさんチャンスをもらってきて、それをたくさんフイにしてきた部分もあるんですけど、階級を上げたと同時にいろんなことが重なって、今が僕のタイミングなのかなとは思いますね。パッとしなかった選手がいきなり強くなる様子もたくさん見てきたし、タイミングって人によっていろいろあると思うんですよ。それが僕にとっては今なのかなと。だから今までの負けもそうだし、Krushに出させてもらった時に会見やインタビューで話をする機会が多くて、自分の言葉で伝えることについても成長させてもらったと思うし、そういう一つ一つが今になって意味を成してきているなというのはすごく感じてます。だからこそここで結果を出すことが重要なんだなと痛感しています。
-- 試合日程のスライドなどもあって、当日はスーパーライト級の同じく決勝、ライト級のタイトルマッチと並んでいますし、スーパーファイトではチャンピオンも数多く出場する中での試合になりました。その中で新階級の存在感をアピールしたいですよね?
松倉 最初は一瞬、「こんなに試合が重なっちゃって、存在感が薄れちゃうんじゃないかな?」という弱気な気持ちが出てきてたんです。僕の悪いところなんですけど。格闘技界はチャンピオンがたくさんいて、僕も認識できてないチャンピオンもたくさんいるんですけど、例えばK-1なら武尊選手、RISEなら那須川天心選手という風に、団体で認識されてるチャンピオンって、階級とは関係ないじゃないですか。その団体の代名詞になってるというか。僕はそこを目指しているので、プレッシャーはすごくありますけど、チャンピオンが一堂に会して試合をする中でどれだけの爪痕を残せるか、みんなに知ってもらって引っ張っていけるのか、その魅力があるのかが問われるというか。決して田村選手をなめてるわけではないんですけど、田村選手を含めて対戦相手の多い大会だなとは感じてます。
-- その中でベルトを獲って、理想の姿で終わるために、一番必要なものとは?
松倉 倒すのは当たり前で、“華”というか……言葉にするのは難しいんですけど、別にただKOしたから「すげえな」と思われるわけでもないし……僕が求めているのは、会場の空気を一瞬で変えられるようなものを見せたいなと思っていて。終わった後に「いやあ、あの選手がすごかったな」と思われるのが一番、という風に思ってますね。いかにそういう魅力を出せるか。「この人なら『KNOCK OUT』を変えられるんじゃないか、引っ張れるんじゃないかと、周りの人を信じさせられるような雰囲気とか佇まいを出していきたいなと思っています。
-- 以前とはかなり考え方が変わったんじゃないですか?
松倉 多くの選手は、活躍するスター選手を見て「あれは自分にはできない」「自分とは別物だから」と思っちゃってると思うんですよ。僕も以前はそうでした。でも人々が試合を見て心を揺さぶられるのって、テクニックとかじゃなくて、覚悟が見えた時だと思うんです。そういう時に人々は熱狂したり感動したりするんだなと思って、そこは僕も含めて足りなかったなと思ったので、みんなに見せていきたいと思う部分ですね。
-- そういう意味でも大きな試合ですね。
松倉 そうですね。これが終わりでは全然ないんですけど、ここをキレイに完結させて次のステップに進みたいなと思っているので、本当に落とせない試合ですね。
プロフィール
松倉 信太郎(まつくら・しんたろう)
所属:TRY HARD GYM
生年月日:1991年11月12日
出身:アメリカ合衆国フロリダ州
身長:180cm
戦績:46戦30勝(16KO)16敗