2022/03/02

3.12 KNOCK OUT 2022 vol.2|日菜太 インタビュー公開!

 

 

 

「リミットは今年1年。最後に強いヤツとやるために!」

 

3・12『KNOCK OUT 2022 vol.2』の「KNOCK OUT-BLACK -72.0kg契約/3分3R・延長1R」で、サッシスと対戦する日菜太。昨年2月に海人に敗れてREBELS王座を失って以来のリングとなる日菜太が、いよいよ現役生活の最終章に乗り出した。18年にわたって戦い続けてきた彼は、ラストイヤーと位置付けた今年、何を目論んでいるのか?

 

 

 

-- 先日のカード発表会見では、日菜太選手の発言が意外な方向に進んでましたね。

 

日菜太 そうですか?

 

-- 「僕がこんなことを言うようになるとは……」の連発だったじゃないですか。面白かったんですが(笑)。話しているうちに気付いたことがあったんですか?

 

日菜太 「年取ったんだな……」ということに気付きましたよね。18歳でデビューしてずっとやってきて、選手をやってると自分の年齢が分からなくなってくるんですよ。それで、子どもが生まれて自分の時間が取れなくなって忙しくなってきた時に、ふと「ああ俺、36歳になるんだ」と思って。そしたら一緒に練習してる子の中には18歳とか16歳という子もいるわけじゃないですか。その時に、「あー、年取ったなあ……」って思いましたね(笑)。

 

-- まあ、人間だから年は取りますよね。ただ、日菜太選手の場合は若い選手にも体力的に勝てないとか、そういうことはないように思えるんですが。

 

日菜太 昔とは違うんだという切り替えは、今はすごくできてるんですよ。練習とか追い込みで、1回1回の強度は全然昔と変わらずできるんですけど、それが続けてできなくなってるんですね。昔は週6でやれたけど、今は週5だったり4日半にしたりして、休む日を作らないと体がもたなくなってきたというか。でもその分、経験値だとか、単純なパワーとかは若い時よりもついてきてるんじゃないかとも感じてます。そういうところで成長も見えるので、そこを差し引きして、最終的に過去最高の自分を作り上げて、すげえ強いヤツともう一回だけやりたいなっていう思いはありますね。

 

-- そこを見据えて、今の段階ではどこまでできるかというのを見据える試合でもあるわけですね。

 

日菜太 はい。この1年間、今までのような練習をやらなかった中で、試合でどれだけ動けるかっていうのは、正直やってみないと分からないですからね。だから毎日、できることを練習しているという感じです。

 

-- ちょっと気になったのは、気持ち的には一度、ほとんど切れたわけですよね。

 

日菜太 そうなんですよ。海人戦が終わって山口会長から「今までおつかれさん」って言われて、「俺はもうこれで終わりなんだな。次は引退試合か引退セレモニーだな」と思ったんです。そこで、キックをやる気は完全になくなって、最後のけじめだけ声がかかったら出ようかというぐらいで。それから1ヵ月ぐらいは何もやらなかったですね。近所をランニングしたり、体が落ちるのがイヤだったから軽い筋トレぐらいはしてましたけど。

 

-- 気になったというのは、その状態から、リングに上がるテンションまでまた戻せるものなのかなということです。

 

日菜太 ずーっと同じことを繰り返してきたというのが練習での僕の強みだと思ってたんですけど、「そういう生活って楽しかったんだな」って、一回離れてみてまた戻ってきて、思ってますね。やっぱり俺は練習が好きだったし、キツい思いをするのが好き……だったのかはよく分からないですけど、格闘技をやってる時は楽しいんですよ。そういう意味では、今はまた楽しく練習できてます。

 

-- また新鮮な気持ちに?

 

日菜太 そうですね。離れてた時は、ガラにもないことをちょっとだけやったりもしてたので。

 

-- というと?

 

日菜太 引退後、ジムを開いたりした時に、格闘技だけじゃ心もとないなと思ったので、サポートを受けていたストレッチ店で3ヵ月ぐらい働いてたんですよ。ストレッチを習って、お客さんに施術もしてて。

 

-- そうだったんですか!

 

日菜太 ストレッチ店を自分のジムで並行してやれたら、若い選手のちょうどいいバイトになるかなと思って。俺が教えたりもできますしね。自分の体のケアという意味でもちょっと勉強したくて、その目的もあったんですけど、自分でやってみないと、将来人に「やれ」とも言えないなと思って。まあ、楽しかったし、いい切り替えにもなりました。

 

-- そういう経験も経て、また新たな気持ちで試合に臨むと。

 

日菜太 俺の中では、今年1年で区切ってやろうと思っています。でもこの試合をやってみて、「動けないな」とか「いい試合できなかったな」となったら、「応援してください」とも言いづらいじゃないですか。もしかしたらそうなるかもしれないですけど、「もう一回見たい」と言ってくれた人もたくさんいたし、いい感じで伸びてる部分も感じているので。

 

-- では以前よりもさらに、一つひとつの試合が大事になってきますね。

 

日菜太 そうですね。僕は練習が仕事で試合が給料日という感覚で、年間3~4試合をノルマに何年も何年もずっと戦ってきたので、それが1年間なくなった時に、「あー、仕事してねえな!」っていう思いがすごくあったんですよ。だから今回は久しぶりに「これから仕事するな」っていう気持ちがありますね。

 

 

 

 

-- そんな中でのサッシス戦ですが、試合の中でのテーマみたいなものはありますか?

 

日菜太 今回は相手が誰だろうが関係ないんですよね。自分がどれだけ動けて、どれだけ自分のスタイルの戦い方ができるかということなので。いい勝ち方で、当然のごとく勝てるようにやるだけですね。アンディ・サワーが去年のONEでマラット・グレゴリアンとやって引退したみたいに、あんな試合を最後に俺もやりたいなと思ったんですよ。あんな、200戦近くやった超名選手が、最後に一番強い選手とやるっていうストーリーはいいですよね。俺も70戦以上やってきたので、最後に強い、いい選手とやりたいなと思って。格闘技って、中途半端に残ろうと思えば、レベルを落として残れる面もあるじゃないですか。

 

-- 確かに、名を成した選手なら特にそうですね。

 

日菜太 そういうのはよくないなと、俺はずっと思ってたんですよ。最後の最後までトップどころとやれる状態で終わりたいなという思いがすごくあるので、そこはブレずにいきたいですね。

 

-- 「自分がどこまで動けるか」という話がありましたが、ご自分の中で、動けているかどうかのバロメーターみたいなものはありますか?

 

日菜太 やっぱり、しっかり蹴れているかどうかじゃないですかね。これまでも、蹴れない試合は内容も結果もよくないことが多かったので。でもホントに、僕は1年も試合をしなかったことがなかったし、試合はフタを開けてみないと分からないので、不安な部分もたくさんあって。SNSで、「1年前の思い出」みたいなのが表示されるじゃないですか。つい先日、それで「あ、1年前の今日は海人選手とやってたんだ」と思って。でも僕にとってあの試合は、数多くある試合の一つとしかとらえてなかったんですよ。特別な思いというのは何もなくて。

 

-- そうでしたか。

 

日菜太 ホントにたくさんある試合の一つとして、特別感もなくやってしまって。モチベーション的にも特別に高いというわけではなかったんですよね。試合をやりすぎて、一つひとつの試合に対するモチベーションを高く保つのが難しくなっているなとも思えて。だから今年はいい緊張感を持ってやり抜きたいですね。

 

-- リミットを決めて、そこまで走っていくという決意がいい効果を生んでいそうですね。

 

日菜太 ホントにダラダラやっちゃダメなんですよね。って、俺が言っちゃいけないんでしょうけど(笑)。

 

-- いえいえ、日菜太選手の場合は年数と試合数に中身も伴っているわけですから。

 

日菜太 いや、俺はいつも大事なところで勝てなくて、ここぞというところで落としてきましたからね。でもこの10年間以上、本当に世界のトップとやり続けてきた日本人は俺だって自分で信じてるので、最後の最後までそこに噛みついていきたいなと思ってます。

 

-- そして、今年の2~3戦で、最後に特別な試合を実現できるだけのものを見せないといけないと。

 

日菜太 まさにそうですね。2~3試合でそういう試合を見せて、最後の試合を組んでもらえるように、強い相手を呼んでもらえるように、周りの人たちに認めてもらいたいなっていう、「査定」ですよね。「僕の最後のわがままなので、応援してください」って言ってるぐらいなので(笑)。

 

-- では最後に、今のお話も全部引っくるめて、今回の試合で一番注目してほしいポイントはどこでしょう?

 

日菜太 1年ぶりの試合でどれだけ動けるのか、「この1年、日菜太の試合は全部見たいな」と思ってもらえるような試合をするつもりなので、1年間追っかけるきっかけになってもらえればと思います。

 

 

 

 

プロフィール

日菜太(ひなた)
所属:クロスポイント吉祥寺
生年月日:1986年8月26日
出身:神奈川県平塚市
身長:181cm
戦績:71戦51勝(17KO)20敗
獲得タイトル:元REBELS-BLACKスーパーウェルター級王者/元RISE 70kg級王者