8・29 後楽園ホール 「新たな始まり」と銘を打つKNOCK OUT.56~NEW BEGINNING~

タイ、中国からの強豪を迎え八角形リングを使用した本大会の注目試合を 名だたる格闘メディアにコラム執筆を依頼、 本企画の最初はMMAPLANET 高島学氏のコラムを公開!

KNOCK OUT UNLIMITEDルールでの電撃参戦を発表した松嶋こよみ選手、 高島学氏には KNOCK OUT-UNLIMITED -68.0kg契約 「松嶋こよみ vs ジャン・チャオ」がどう映るのか。是非ご覧ください。

「松嶋こよみは、自身のMMAでフィニッシュ必須」



松嶋こよみは、鬱憤が溜まっている。UFCを目標に戦い続けてきたが、2022年にRoad to UFCの準決勝で微妙な判定負けを喫した。翌年にはDEEPで再起するも、TOP BRIGHTSで今を時めくカルシャガ・ダウトベックと対戦しTKO負けを喫した。それでもUFCを諦めるという選択はなく、GLADIATORフェザー級王座決定トーナメントで初戦を突破した時点で、北米ナンバーワン・フィーダーショー=Legacy Fighting Allianceと契約。オクタゴンへの登竜門から、最高峰を目指す獣道を選択した。



しかしながら、いつまでも経ってもビザが取得できない。同じ時期にLFAと契約した上久保周哉は、4カ月後の今年1月にビザを取ると翌2月にはニューヨーク州ナイアガラフォールス大会で北米デビューを果たした。対して松嶋は書類選考をクリアしたという報が届かず、結果的に再申請が必要という想いもよらぬ事態に陥ってしまった。

この間、所属ジムのオーナーであった恩人を亡くし、指導者から経営者として立場を変えてジムに関わることになった。慣れない手続きやこれまでになかった社会的責任の重さを感じつつ、松嶋は試合間隔をこれ以上に空けないために国内で試合をする気持ちを固めた。そんななかKNOCK OUTから、UNLIMITEDルール出場の打診があった。

参戦決定からやや時間をおいて明らかとなった対戦相手は、中国のMMAファイター=ジャン・チャオだ。正直、国内外キック&ムエタイ界66キロ~70キロの強豪選手との絡みが見てみたかったという想いはある。と同時にどれだけ優れた立ち技スペシャリストでも、日本MMA界有数のストライカーでありながらレスリングの名門・網野高校から特待生で大学に進学(※MMAファイターを目指すために中退)している松嶋とUNLIMITEDルールで戦うのは、酷というもの。組みやMMAの経験がなく、UNLIMITEDで松嶋と戦うことは勝負でなくギャンブルになってしまう。



その結果ともいえるジャン・チャオの登用だ。ボクシングと散打がベースとういうジャン・チャオのMMA戦績は4勝4敗。15勝7敗の松嶋との経験値の差は明白だ。とはいえ、この試合はUNLIMITEDであってMMAではない――と力説したいとことだが、松嶋がこの試合でやるべきことはMMAで勝つことだ。



もちろん、グラウンドでのブレイクが速いことは百も承知だ。それでもテイクダウンを交え、スタンドの展開でも明確な差を見せる必要がある。かといってジャン・チャオの打撃を見くびるわけでは、決してない。現に左ジャブで対戦相手からダウンを奪うシーンが、動画で確認できている。ジャン・チャオは全く見くびることはできない、ハンズパワーの持ち主といえる。

とはいえ、そのパワーの源は前足をくさびにした「溜め」にある。思いきり踏み込んだ足から伝わる力、その養成のために左足はしっかりとキャンバスに根付くことになる。その前足は松嶋にとってローキック、あるいはテイクダウンを狙うターゲットになる。

ジャブに続く右フックは旋回力でパワーを得ており、松嶋としてはしっかりと見切れる攻撃のはずだ。またジャン・チャオは散打がベースとされているが、蹴りをほとんで使っていない。一挙動のステップイン&スルーパンチはスピードも感じさせるが、松嶋があの位置に止まって打撃戦に応じる姿は想像しがたい。

しっかりと足を使い、間合いを測った上で――かなり広めに開いているミドルセクションに、スイッチスタンスから左ミドル、テンカオを決めて決定的なシーンとしたい。UFCを目指し、逆境をひっくり返すために松嶋に課されたミッションは、UNLIMITEDルールにあっても自身のMMAと変わりない組み立て、フィニッシュ勝利を手にすることだ。

執筆
MMAPLANET
高島 学