8・29 後楽園ホール 「新たな始まり」と銘を打つKNOCK OUT.56~NEW BEGINNING~
タイ、中国からの強豪を迎え八角形リングを使用した本大会の注目試合を 名だたる格闘メディアにコラム執筆を依頼、 本企画の4日目はバウトレビュー 井原芳徳氏 のコラムを公開!
井原芳徳氏には KNOCK OUT-REDライト級 「古村匡平 vs プンルアン・バーンランバー」がどう映るのか。是非ご覧ください。
「ONEフライデーファイツのメインイベンター・プンルアンには、KNOCK OUTの“地獄のライト級”すら生ぬるい?」
「俺が地獄のライト級を制覇して俺が魔王になってやる」
KNOCK OUTを主戦場とする古村兄弟の兄・匡平は、8月29日のMAROOMS presents KNOCK OUT.56 ~NEW BEGINNING~後楽園ホール大会でのプンルアン・バーンランバー戦の発表された記者会見でこう意気込みを述べた。匡平が“地獄”と表現したように、KNOCK OUTのライト級はここにきて実力者がどんどん集まり、KNOCK OUT全体を見渡しても一番過酷な階級になりつつある。

昨年12月からK-1 GROUPの技巧派で元Krushライト級王者の大沢文也が参戦し、5月の後楽園大会では大谷翔司を翻弄しKNOCK OUT-BLACKライト級王座を獲得した。REDルールにおいてもK-1 GROUPから“ムエタイ大魔神”こと元K-1&Krushライト級王者のタイ人・ゴンナパー・ウィラサクレックが参戦し、2月の初戦で匡平をパワフルな攻めで圧倒し判定勝ちすると、6月の代々木競技場第二体育館大会では重森陽太を3R右フックで一撃KOし、KNOCK OUT-REDライト級王座を獲得し、K-1勢がBLACK・REDのライト級を約1か月の間に完全制圧する。
KNOCK OUTのレギュラー勢においても、1つ下のスーパーフェザー級でBLACK・REDの両方のベルトを巻いた久井大夢が、6月の代々木大会で龍聖を返り討ちした試合を最後に、ライト級への階級アップを表明した。早速1か月後の7月の後楽園大会ではREDルール・ライト級で、昨年敗れた相手であるロムイーサンとのリマッチが組まれた。久井はロムイーサンにダウンを奪われ判定負けを喫したが、まだ19歳だ。ライト級に今後アジャストすれば、他の選手たちにとって脅威となりうるだろう。
さらに今大会には、REDルールと同じくオープンフィンガーグローブ着用のムエタイルールをメインルールに採用し、毎週金曜、タイ・ルンピニースタジアムで開催されている「ONEフライデーファイツ(FF)」にレギュラー参戦中のタイ人選手が参戦する。それが今回の匡平の相手・プンルアンだ。ONE FF戦績は12戦7勝(3KO)5敗。当初6連勝し、昨年5月の7戦目ではついにメインイベンターとなるが、実績で勝るジャオスアヤイ戦に1R KO負け。その後今年3月の試合まで4試合連続でメインイベンターを務めるものの1勝3敗で、サミンダンに判定勝ちしたが、ヨードレックペット、アキフ・グルザダ、ナックロップといった実力者相手に3連続でKO負けする。前回の6月の試合ではセミファイナルに下がり、ポンペットにKO負けし4連続KO負け中。ダメージの蓄積が気になるところだが、OFGムエタイでくぐってきた修羅場の数では、KNOCK OUTのレギュラー勢よりも上で、匡平が“地獄”と表現するKNOCK OUTライト級も、ひょっとしたらプンルアンにとっては生ぬるいかもしれない。
そんなプンルアンを迎え撃つ匡平も、最近は過酷な相手・環境での試合が続いたこともあり負けが込んでいる。昨年に入り、佐賀から上京し、KNOCK OUT GYM 調布を練習拠点にしているが、上京初戦となった昨年2月のRIZIN佐賀大会ではREITO BRAVELYに1RKO負け。5月のオーストラリアでのISKAムエタイ世界ライトウェルター級(65kg)王座決定戦では地元の選手のアルフィー・スミスに判定負け。9月のKNOCK OUT福岡大会ではタイ人のムァンコーンに1R右ストレートでKO勝ちしたが、11月のカンボジアでの試合ではムン・メイキアに判定負け。メイキアは今年7月のKNOCK OUTでのREDライト級の試合で小林司を圧倒し判定勝ちしており、彼も“地獄”の新参者だ。匡平の話に戻ると、今年2月、冒頭に記したとおりゴンナパーに判定負け。さらに試合中に拳を骨折し、長期休養を余儀なくされる。



匡平はそれから半年ぶりの試合で「ゴンナパー戦で自分が気づいた足りないものを、しっかり積み上げている途中なので、8月はそれを存分に発揮します」と話す。佐賀から上京し、栗秋和輝トレーナーの元で地道にトレーニングを積んで約1年半。敗戦と怪我に泣かされてきたが、そろそろ素質を開花させてもいい頃だろう。匡平は今後、地獄を制する魔王となれるか?復帰戦も厳しい相手だが、だからこそより一層期待を膨らませて試合の日を待ちたい。
執筆
バウトレビュー
井原 芳徳

