8・29 後楽園ホール 「新たな始まり」と銘を打つKNOCK OUT.56~NEW BEGINNING~

タイ、中国からの強豪を迎え八角形リングを使用した本大会の注目試合を 名だたる格闘メディアにコラム執筆を依頼、 本企画の最終日はフリーライター 中村拓己氏 のコラムを公開!

中村拓己氏には KNOCK OUT-RED-59.0契約 「軍司泰斗 vs ゲーオガンワーン・ソー.アムヌワイデッー」がどう映るのか。是非ご覧ください。

「KNOCK OUT新章開幕で見せるOFGムエタイのトップを目指す覚悟。軍司泰斗が“スーパーレックに勝った男”に挑む」



6月に国立代々木競技場第二体育館大会で開催された“THE KNOCK OUT”。KNOCK OUT夏のビッグマッチに相応しい激闘が続出するなか、最も衝撃を与えた試合は軍司泰斗VSペットルンルアン・ソーチャールワンではないだろうか。

 K-1に存在するプロ・アマすべてのタイトルを獲得し、K-1を象徴する選手となった軍司がONEムエタイを目指すべくKNOCK OUTに電撃参戦。これまで一度も経験したことがないヒジ&首相撲が認められたOFGのムエタイルール=REDルールに挑んだ戦いが、このペットルンルアン戦だった。しかもペットルンルアンは元ラジャダムナンスタジアム認定フェザー級王者の肩書を持ち、タイでも現役バリバリのトップ選手。ヒジ&首相撲を得意としており、軍司にとっては相性が最悪と言ってもいい相手だった。

 軍司が得意のパンチの打ち合いに持ち込めず、ペットルンルアンに首相撲でコントロールされ続けてヒジをもらう。そんな試合展開も予想された中、軍司は抜群の距離感でペットルンルアンのヒジをかわし、首相撲になってもすぐにペットルンルアンに組みついてディフェンス。最後は左ボディを叩き込み、ペットルンルアンをわずか1分22秒秒でマットに沈めてビッグインパクトを残した。







 K-1時代の軍司は前に出る圧力と連打を活かすタイプだったが、ペットルンルアン戦ではローやカーフキックでプレッシャーをかけながらもヒジ・首相撲の距離には入らず。ペットルンルアンが前に出てくるとサイドステップでいなすなど、それまでにはなかった動きを見せた。

 その一方、K-1時代から得意にしていた左ボディは健在で、当日生中継の解説を務めた鈴木千裕が「通常のグローブとOFGは(パンチの)響き加減が違う。OFGの方がボディブローは効く」と話したように、軍司にとってボディブローはOFGムエタイにおいてより強力な武器になっている。

 試合時間こそ1分22秒と短期決着だったが、そこには軍司が自分のファイトスタイルをOFGムエタイ仕様にモデルチェンジしていたことが分かるものだった。

 OFGムエタイ初挑戦で見事な勝利を収めた軍司だったが、更なる強敵との戦いを求めてすぐにリングに立つことを選んだ。今大会で対戦するのは78勝30敗2分の戦績を誇るタイのゲーオガンワーン・ソー.アムヌワイデッー。ラジャダムナンスタジアムと並ぶムエタイの2大殿堂と言われるルンピニースタジアム認定の元王者で、ルンピニー以外にプロムエタイ協会でも王座を戴冠。元ONEムエタイ世界バンタム級王者スーパーレック・キアトモー9にも勝ち越しているムエタイの猛者だ。

 しかもゲーオガンワーンは前回対戦したペットルンルアン同様にヒジと首相撲を得意にするスタイルで、ペットルンルアンとの直接対決にも勝ち越しており、ペットルンルアンの強化版とも言えるファイターだ。

 当初軍司は打ち合いに強い攻撃的なスタイルの選手との試合を希望していたが、最終的にゲーオガンワーンとの対戦に至った。試合がより激しくなる=攻撃的な選手との対戦を見たかったという声もあるだろうが、ムエタイでトップを目指すにはヒジ・首相撲の対処は必須。ゲーオガンワーンのようなタイプと試合を重ねることで、軍司のヒジ・首相撲のスキルと対応力は確実に上がる。軍司自身も「(ゲーオガンワーンと戦うことで)OFGムエタイをやっていく中で経験値が上がる」と語っている。

 OFGムエタイにチャレンジするうえで、ペットルンルアンやゲーオガンワーンと対戦する道を選んだことは、軍司が本気でOFGムエタイのトップを目指す覚悟と意思表示でもある。だからこそKNOCK OUT山口元気代表も豪華カードが並ぶなかで、現役王者のゴンナパー・ウィラサクレックを差し置いて、KNOCK OUT2戦目の軍司にメインを任せる決断をしたのだろう。



 今大会はKNOCK OUTの八角形リングが後楽園ホールに初お目見えとなる大会で「NEW BEGINNING」(新たな始まり)というサブタイトルがつけられた。KNOCK OUTの新たな歴史の1ページとなる大会のメインイベント、ホンモノの強さを目指す男の戦いを目に焼き付けてほしい。

執筆
フリーライター
中村 拓己