「足を振れば当たる位置に頭があったら、もう蹴ってますね」
8・29「MAROOMS presents KNOCK OUT.56~NEW BEGINNING~」の[KNOCK OUT-UNLIMITED -68.0kg契約/3分3R]で高塩竜司と対戦する石田協。7月、常葉でのUNLIMITEDトーナメントに優勝して賞金100万円をゲットした石田は、K-1で戦績を積んでいた選手。戦慄のサッカーボールキックには、それなりの理由があるというが、それは……。
──7月には常葉での「THE KNOCK OUT FIGHTER」UNLIMITEDトーナメントで優勝、改めておめでとうございます! 優勝賞金の100万円は何かに使いましたか?
石田 ありがとうございます。そのお金で、生活の苦しかった部分とかを全部解消できました(笑)。あと、自分に投資したりもあって、もう全部使っちゃいましたね。
──ということは、そのお金が入ってメチャクチャ助かったと(笑)。
石田 いや、本当にそうっすね。なかったらけっこう詰んでたような感じがします(笑)。

──それはよかった(笑)。試合では、サッカーボールキックで大暴れでしたね。
石田 まあ、たまたまというか……何か、流れで出ちゃうんですよね。自分の家って男3兄弟で、自分は次男なんですけど、兄弟ゲンカがかなり激しくて、普通に顔の踏みつけとかやっちゃうんですよね。病院送りとかもけっこうあって。
──マジですか!
石田 はい。もう本当に大ケガするまでやめない家だったので、それが理由かもしれないですね。気が強い家でしたし。
──もしかして、そこで格闘家として鍛えられた部分も?
石田 いや、サッカーやってるのもあって腕っぷしが強くて、誰にもケンカ売られたことがなかったんですよ。「アイツはやめとけ」みたいな感じで恐れられてて。小学校3年生ぐらいまでは他人とケンカしてたんですけど、兄弟ゲンカの感覚でやると大ケガさせちゃうんですよね。えげつないことしちゃってたんで、相手の親御さんが出てきちゃうレベルになっちゃってたんですよ。それで自分の親父から「お前は他人に手を出すな」と。「人に優しくしろ」って言われて、そこから人が変わったような感じになって、「急に優しくなった」ってみんなにも言われたんすけど。そこが自分の転機になりました。
──サッカーは何歳からやってたんですか?
石田 小2か小3ぐらいですね。始めた頃はジャイアンサッカーみたいな……パワーでどうにでもしちゃうようなサッカーをしてたんですよ。でも、「フィジカルだけでやるもんじゃない」と教えられるし、やっていてもだんだん面白くなくなってくるわけですよ。でもディフェンダーになって、今度は相手のフォワードを潰すみたいなのがまた楽しくなってきちゃって。だからフォワードを戦意喪失させるのが好き、みたいな感じだったんですよね。
──いろいろ物騒ですが(笑)。
石田 でも結局、チームスポーツに向いてなかったのもあって。やっぱり集団行動がすごく苦手なんですよね。だからサッカーはもう全国大会に出たら区切りをつけようと思ってたので、高校で全国大会に出て区切りをつけたって形でした。
──でも全国に行くぐらいサッカーを頑張ったわけで、しかも強くもなったと。
石田 はい、そうですね。両親には本当に迷惑かけましたけど。で、格闘技をやろうと思ったんですけど、18歳の時はウダウダして結局何となく始められなくて、19歳になって始めました。1年でプロになってやろうと思ったらなれなくて、そこも2年ぐらいかかって。
──そこからKrush-EXが2試合でKrush本戦が1試合。2勝(2KO)1敗で順調かと思ったら、また2年ぐらい間が空いてますね。
石田 その頃はずっと仕事しながら格闘技をやってたんですけど、3戦目で負けた時にすごいショックを受けたというか……、2勝してちょっと調子に乗ってたのもあったと思うんですけど、自分の体調管理とか減量がうまくいかずに、そういうところですごく足元すくわれて、試合もああいう感じ下手くそな部分が出て失神KOとか食らっちゃって。そのあたりから練習にもちゃんと行かなくなって、「自分の人生なんだから」みたいな変な自我が働いて、ジムに対しても反抗的になっちゃってたんですよね。ちょうど代表が変わる時期だったんですけど、その時に当時の仕事で借金がいろいろあったんですけどそれで働かざるを得なくなって、格闘技にも専念できないようになってて、全部が中途半端だったので試合もさせてもらえずというか。
──そうですか……。
石田 そこで秀さん(山崎秀晃)に拾っていただいたんです。プロとしてちゃんとやっていこうとなった時に、今までの仕事を続けていたら100%練習ができないので、それもきっぱり辞めて。秀さんは「よかったらウチのジムで働いてくれよ」って言ってくれたんですよ。僕は本気で秀さんを尊敬していたから、そう言ってもらえたのがメチャクチャ嬉しくて、ぜひ働かせてください!となって。
──では、今は生活のほぼ100%が格闘技になったということなんですね。それで優勝して100万円も獲得して、すごく好転してるじゃないですか。
石田 いやでも(笑)、今は午後ちょっとしか働いてないので、格闘技をしないと収入がないんですよ。だから試合がやれるだけでも本当ありがたくて。あの100万円トーナメントがなかったら、本当にしんどかったですね。
──実はその切実さも、優勝の原動力になったとか?
石田 そうかもしれません(笑)。でも、まだだらしない部分も多いから、そうなってしまっていた部分もあったんですよね。でもこれでしっかり切り替えていこうと思って、格闘技もやっとスタートラインですね。
──というところで今回の相手は高塩竜司選手ですが、まずどういう印象ですか?
石田 けっこうガンガン打ち合ってくれる選手かなという印象ですね。相手が6月に戦った木下カラテ選手には、僕はけっこうお世話になっていて、スパーリングとかよくやったりしてたんです。
──そうなんですか。
石田 はい。木下選手の次の相手がサウスポーだったら、KRESTに出稽古に来て、僕とガチスパーするみたいなことがチョコチョコあって。一度、UNLIMITEDルールでマススパーもやってもらったことがあって、その時は「えーっ!」という感じだったんです。キックとは全然違って、「こうなるんや!」みたいな。木下さんは組みもけっこう強いっていう自負があったみたいなんですけど、そんな人が高塩選手にコロコロ投げられるのにビックリして。一本背負いっていうんですかね。だから「なるほど、こういう技もUNLIMITEDでは生きてくるのか!」って、逆にちょっと勉強させてもらったみたいな(笑)。ただ、僕は純粋にバチバチできる選手が好きなので、嬉しいですね。戦いに対する恐怖とかは別になくて、ただ純粋に「やろうぜ!」みたいな感じですね。
──そういう相手と、ガンガン殴り合いたい?
石田 そうですね。マインド的には「ぶっ殺す!」ってなってアガってます(笑)。
──しかし、もし今回もサッカーボールキックで決められるようだったら、本当に代名詞的な技になりそうですね。
石田 そうですよね。特に意識はしてないんですけどできたら出したいです。相手が倒れてたら、あえてそっちでKOするとかもあるかなと思います。
──そこはもう、その時の自分に任せる?
石田 はい。足を振ったら顔に当たる位置にあったら、もう蹴ってるので。特に意識せず、そのタイミングになったらもうペッと出すと思います。

──これからはUNLIMITEDでやっていきたいですか?
石田 僕自身、こだわりがあるわけじゃないですけど、やっぱり格闘技ってみんなに見られてこそじゃないですか。試合して、人にいい影響を与えるというか、感動させたり盛り上げたり。「こういうルールがある」というのも、見られてナンボかなと僕は思ってて。なかなか試合ができない選手とかもたくさんいる中で後楽園ホールの本戦に呼んでいただいているし、どのルールでもある程度やれるだけやりたいですよ、もちろん。UNLIMITEDルールは全然好きですし。ただ、キックもUNLIMITEDも両方やっていきたいですね。KNOCK OUTからもオファーがもらえるならどんどん出ていきたいです。
──改めて、格闘家としての今の目標はありますか?
石田 やっぱりベルトは狙いたいですね。倉本選手が巻いてるベルトができましたけど、66kgでもできたら、狙いたいなと思いますね。打撃もしっかり極めつつ、MMAの練習は怠らないでおいて、どっちが来てもいいようにはしておきたいです。
──では最後に、自分のここに一番注目してほしいというポイントはどこでしょうか?
石田 フィジカルです。そこは自信がありますね。絶対押し負けてやんねえからな!と思いますし、そういう勝ち方をしたいです。
──分かりました。ありがとうございました!
プロフィール
石田 協
所属:K-1 GYM SAGAMI-ONO KREST 生年月日:2001年10月2日生 出身:東京都町田市 身長:177cm 3戦2勝(2KO)1敗
「THE KNOCK OUT FIGHTER」UNLIMITED -66kgワンデートーナメント優勝
第42回K-1アマチュア チャレンジAクラス -70kg優勝

