「一風変わった試合になると思います。武術的な動きを見てほしい!」
8・29「MAROOMS presents KNOCK OUT.56~NEW BEGINNING~」の[KNOCK OUT-UNLIMITED -58.0kg契約/2分3R]で松本飛雅と対戦する西村虎次郎。3月・4月の常葉でのUNLIMITEDトーナメントでは、優勝はならなかったものの、その動きのユニークさで高い評価を得た。ただ本人としては、「ユニーク」とか「変則的」と言われるのは少し意外なようで……。
──今回がプロデビューという形になります。KNOCK OUTでは3月と4月にUNLIMITEDトーナメントに出ましたが、あのトーナメントを今振り返るといかがですか?
西村 初めてのルールで慣れてなかったということもあって、すごく勉強になったなっていう感じですね。それまで3Rっていうのをあまり経験したことがなくて、空手では武術的な稽古をしていて、20秒とかのすごく短い期間での訓練が多かったものですから、スタミナ面というところで課題を発見できたのが収穫だったかなと思いました。
──トーナメントでは、独特な動きがすごく評価されていたと思います。そういう反応についてはどう感じましたか?
西村 「変則的スタイル」とか言われたりするんですけど、僕自身はそんなイメージは特になくて。でも格闘技を見てる方からすると、何か変わった動きに見えるんだなというので、そういう評価をいただけたのは、意外でもありつつ、注目してもらったのはけっこう嬉しいですね。
──自分としては、ずっとやっている動きをやっているだけという感覚?
西村 本当にそうですね。本当に稽古した動きをそのまま出してるので。動きでかき乱してやろうみたいな感じではないので。
──空手出身のファイターって、キックボクシングにもMMAもいると思うんですが、その中でも個性的な動きに見えます。そこは何か理由が思い浮かびますか?
西村 そこで言う「空手」というのは、例えばフルコンタクト空手だったり、オリンピック種目になったような伝統派空手だったり、「組手の競技」になってるものだと思うんですね。なのでスタイル的には格闘技と相性がいいというか。競技の特性上の違いはあっても、そんなに大きなものではないのかもしれないんですけど、僕がやってる「空手」はルールがないというか、実戦を想定したものなので、そういう稽古をしてる選手はいないというか、珍しいんだと思います。
──なるほど。
西村 例えば格闘技だったらオーソドックスとかサウスポーって分かれると思うんですけど、武術では利き手という概念がないと言われていて。右、左、どちらも戦いの中で変化していくっていうのが当たり前にあると思うんですよね。日本の格闘技ではそういったところは珍しいから、そこが目についたのかなと思ってたりはしていました。
──西村選手のプロフィール欄には「スイッチ」って書かれていますが、厳密に言うとスイッチということとは違うわけですね。
西村 そうですね。右でも左でも戦うし、時によってはもう本当に瞬間的に変わっちゃうので。
──いわゆるMMAだったり、競技としての格闘技とは、出発点が違うということですよね。
西村 そうだと思います。あんまりこういうことを言うと失礼かもしれないですけど、格闘技でのし上がっていこうという意識はそこまで強くなくて、どっちかっていうと武術家としてレベルアップできるのが一番嬉しいですし、試合は「稽古の場」としてでているというがありますね。
──その中で、UNLIMITEDというルールそのものについてはどう感じていますか?
西村 すごく面白いルールだなと思っています。たぶん、打撃を見せたいっていう意図を、ルール設定から徹底しているんだなと。僕の師匠の菊野克紀が言ってるんですけど、「ルールというのは思想である」と。そのルールを作った人の思想がすごく入るんだということを、彼は言うんですね。UNLIMITEDルールは打撃での打ち合いというものを常に見せていきたいんだと、僕は理解していて。あと、ケンカに近いみたいなことを思ったりしますね。実践のある一部分を切り取ったような面白いルールだなと思っています。なので、寝技が少ないというのも大きなポイントだと思いますし。頭突きはないにしても、いろんな打撃が認められたルールなので、武術の練習をするのにすごく適したルールかなと感じていますし、自分のレベルアップに役立つので、個人的にも好きなルールですね。
──そんな中、今回は松本飛雅選手との対戦になりますが、どういう印象でしょうか?
西村 格闘家として、完成度高いなと思います。技術もすごくしっかりしてるし、トータルの組みのバランスもいいし、気持ちも強いですし。過去2戦のプロの試合も見たんですけど、どっちも判定で勝ってるんですね。下手にバーン!とKOで勝っているよりも、怖さがあるなと思います。
──どういう戦いにして、最終的にどう勝ちたいと思ってますか?
西村 武術的には「作戦を練る」というのがあんまりないんですよ。「路上で出会ったらどうなるか」みたいなところを想定してるので、むしろ、どういう勝ち方になるかっていうのをあんまり想定しない方がいいパフォーマンスを出せるかなと思っています。ただ、最終的には打撃で決着がつくだろうなとは思っています。松本選手はすごく基本に忠実な選手だと思うので、それと僕の、格闘技的に言うと「変則的な動き」というのは、僕に有利な形で噛み合うんじゃないかとは思っています。
──稽古の中では、相手の動きの分析だったり、それに対する対策練習みたいなことはするんですか?
西村 一応、僕がMMAを習ってるのが、パンクラスで戦っている野田遼介選手なんですけど、指導してもらう中で、次の相手はこういうところがあるよという形で、彼らが分析した情報を教えてもらっています。「相手はこうだから、こうしようね」みたいな感じで、動きを仕込んでもらっています。僕も何も考えず、仕込んでもらった動きを競技的に出せるようにするという練習はしています。
──では、普段やっている武術の練習とはまた別ものという感覚ですか?
西村 はい。やっぱりプロ格闘家として舞台がある中での試合なので、ちゃんと勝つ準備をして、しっかりとしたパフォーマンスを見せなきゃいけないというのはやらなきゃいけないので、今回もこのルールにアジャストするための練習というのは、ちゃんとできたつもりでいます。
──となると、「プロデビュー」ということも大きな意味はないですか?
西村 選手としてはそこまで意識はしていませんが、応援してくれてる方とか、オファーして試合を組んでくださっているKNOCK OUTという団体のためには一生懸命頑張ろうとは思っています。でも個人的なテーマとしては、武術的に強くなるということですね。
──では、プロとしての目標も……。
西村 特にないですね。ただ、面白い試合を見せていきたいなとは思っています。
──なるほど、よく分かりました。では最後に、今回、自分のここに一番注目してほしいというポイントはどこでしょうか?
西村 「異種格闘技感」みたいなところを見せたいなと思っていますし、僕も動き的にはアグレッシブに攻めて、速く攻撃を仕掛けるタイプなので、動きのアグレッシブさとか、面白さを見てもらえたらいいなと思います。技術的には一風変わった試合になると思うので、注目していただけたら嬉しいです。
──分かりました。ありがとうございました!
プロフィール
西村 小次郎
所属:誰ツヨDOJOy 生年月日:1999年7月22日生 出身:北海道釧路市 身長:169cm 本大会がプロデビュー戦

