「相手が誰だろうと、タックルして投げて蹴っ飛ばすだけ。シンプルです」
9.13「優勝賞金100万円 THE KNOCK OUT FIGHTER UNLIMITED -57.0kg 1DAYトーナメント」に出場する前田壮吉。修斗でプロの試合を3戦経験している前田は、以前の61kgトーナメント出場の話があったがケガで断念。今回がいわば“リベンジ”だ。このトーナメントをきっかけにUNLIMITEDで上を目指したいという前田の目論見とは?
──前田選手は修斗でプロMMA3戦のキャリアがありますが、そこから今回のUNLIMITEDトーナメントにエントリーした理由は何だったんですか?
前田 UNLIMITEDというルールは以前から知っていて、僕は高校の時にレスリングもやっていたので、出てみたら面白いかなぐらいに思ってたんですよ。でもMMAもやりたいし……という感じだったところに、61kgトーナメントのお話をいただいたんですね。でも選考会の数日前に上腕二頭筋の腱断裂というケガをして手術することになって出られなくなって。今回、57kgでまたトーナメントがあるということで、ぜひ出させてくださいとお願いしました。
──階級は問題なかったんですか?
前田 はい。どっちでも大丈夫だし、修斗では56.7kgのフライ級でやっているので、そこは全然問題ないです。
──このトーナメントでの戦い方については、どうイメージしていますか?
前田 打撃をやりたいのはもちろんなんですけど、自分が今持っている武器で勝つことを考えた時に、バスターなりでテイクダウンして、MMAだったらパウンドにいくところですけど、このルールはそこからの蹴りも解禁なので、蹴っ飛ばして勝ちたいなと思っています。
──ただ、普段はそういう練習はしていないですよね?
前田 そうですね。UNLIMITEDに出ると決まってからはそういう部分も意識した練習をしていますけど、普段は反則になっちゃうので。でも前回の選考会の時も、作戦通りに投げて顔にヒザ蹴りを入れて勝てましたからね。うまくいきすぎたところもあったんですけど、イメージ通りにいけたので、さらにいいイメージでトーナメントを迎えられそうです。
──トーナメントのメンバーについて思うことは?
前田 みんな強いなとは思います。でも、自分はそれ以上に頑張るというだけですね。特に気になる選手とかはいないです。
──対戦相手が前日の抽選で決まることと、優勝するには1日3試合勝たないといけないことについては?
前田 優勝するつもりでいるので、直前に相手が決まるというのは自分的には問題ないですね。どっちみちトーナメントとなると誰と当たるか分からないから、誰でもいいです。相手が誰であろうが打撃もやるし、隙を見てタックルして投げて仕留めるだけなので、シンプルに考えてますね。
──それを3試合やり抜くのに、一番必要だと思うことはどんなことですか?
前田 自分を信じ抜くことですね。仲間との練習とかセコンドの指示、そういうのを含めて自分を信じてやるだけです。
──優勝賞金は100万円ですが、使い途は考えていますか?
前田 レゲエが好きなので、ジャマイカにでも行きますかね……というのは冗談で(笑)、親とか兄弟とかに使いたいなと思っています。自分の格闘技関係のことにも使いたいですけど、親孝行というものを特にしてこなかったので、ここでしたいと思います。
──前田選手は6人兄弟なんですよね。前田選手をはじめ、レスリングをしている方が多いそうですが、「レスリング一家」なんですか?
前田 気づけばそうなってますね(笑)。自分が長男で男6人の兄弟なんですけど、僕はレスリングは高校生の時だけで。次男が今パンクラスで試合をしていて、三男はやってなくて。四男も高校でしかやってないんですけど、グレコローマンで国体3位は獲ってます。5番目と6番目が今、高校3年生と高校1年生で、2人とも現役でやっていて、上の方はあとは国体だけですね。
──6人中5人はレスリング経験者なんですね。やはりお兄さんがやっているからという感じで?
前田 はっきり聞いたことはないですけど、そういう感じですかね。
──でもそれ以前に、男6人兄弟というのがすごいですよね。お母さんに苦労話を聞きたくなります(笑)。
前田 そうですよね、親はすごいと思います。僕が優勝したら、ぜひ母親にインタビューお願いします(笑)。あと、母親の弟が大相撲の力士なんですよ。栃乃花という四股名で小結まで行って、地元じゃ超有名でしたね。
──そうなんですか、それはすごい!
前田 僕が小学校に上がる前ぐらいが全盛期だったんですけど、その頃は小結のすごさも何も分かってなかったですけどね。大人になって格闘技をやるようになって、「半端ねえな」と思うようになりましたけど。
──十両に上がるのも一握りですからね。小結はすごいですよ。けっこう格闘技一族なんですか?
前田 そうですね。母方の家系には相撲の世界チャンピオンとか、大学柔道で活躍した人とかがいて、そっちはけっこう格闘技一族という感じです。でも僕が始めたのはその影響という感じでもなくて、相撲もやったことはなかったですね。「周りに耳が腫れたデカい人がたくさんいるな」とは思ってましたけど。
──それもすごいですけどね(笑)。ただ前田選手自身は、プロデビューは遅かったですよね?
前田 デビューは2年前なので、28の時ですね。高校でレスリングをやってて、格闘技も興味はあったんですけど、そんなに本格的にやるとまでは思っていなくて。高校卒業後は地元の岩手で自衛隊に4年ぐらいいたんです。
──所属ジムのオフィシャルサイトの選手紹介では「愛車は戦車」と書かれているのはそういうことだったんですね。
前田 はい、そうなんです(笑)。その頃に仲良くなった先輩で元キックボクサーの人とかが何人かいて、その人の誘いで地元でMMAの練習をやり始めたんです。当時は常設のジムはなくて、体育館とかを借りて練習していたチームで。そこに連れて行ってもらったのがきっかけで、最初は本当に趣味程度でした。それが21~22歳ぐらいの時ですね。
──そこから?
前田 自分も当時はそこまでガッツリやるつもりはなくて、アマチュア修斗とかもよく知らなくて。一緒に練習してたやんちゃなお兄ちゃんたちが地下格闘技に出てたので、そこに出るようになったんです。レスリングをやってたから全然余裕で勝てたんですけど。1年ぐらい地下格に出てましたね。その後、もともと関東でMMAをやっていた人が盛岡でやるようになっていて、その人たちがZSTの前座のSWAT!というのに出ていたんですが、そこで「お前も出る?」って声をかけてもらって出るようになって。最初は勝てたんですけど、その後勝てなくなって、24歳ぐらいの時に負けた試合の後、「どうせなら関東に行こう」と思って横浜に行きました。
──それでリバーサルジム横浜グランドスラムに入ったんですね。
前田 代表の勝村周一朗さんとはちょっとした知り合いだったので、「どうせ来るならウチに来ない?」と声をかけてもらって入会しました。最初は1年ぐらいでプロになれるかなという浅はかな考えだったんですけど、来て1ヵ月ぐらいの頃に脱臼してしまって。引っ越す1ヵ月ぐらい前に脱臼の手術をしていて、治ってきたなと思ってたんですけど、すぐにまたやってしまって、最初の年はほとんど練習もできなかったんですよね。
──そうでしたか。
前田 2回目の手術はしたくなくて、ちょっとやったらまた脱臼して、治ってきたと思ったらまた……というのの繰り返しで。勝村さんに「1年できなかったんだから、手術してまた半年できなくても、長い目で見れば変わらないよ」と言われて、そりゃそうだなと思って手術しました。その後ちょうどコロナとかもあってアマチュアの試合もなくなって、結局思うような練習ができるようになったのは3年目ぐらいからでした。
──なるほど。プロになっての目標は?
前田 今は、UNLIMITEDで上を狙いたいなと思ってますね。今は自分のプレイスタイルも模索中なんですけど、MMAとは違うルールでやることによって、新しい発見をしながらやっていって、いずれはMMAでやっていけたらと思ってますけど。ただ当面はUNLIMITEDを頑張っていきたいです。
──では最後に、今回のトーナメントへの意気込みをいただけますか?
前田 みんな強いと思いますけど、自分が3KOして絶対優勝を掴み取るので、応援よろしくお願いします!
──分かりました。ありがとうございました!
プロフィール
前田 壮吉
所属:リバーサルジム横浜グランドスラム 生年月日:1994年12月3日生 出身:岩手県宮古市 身長:171cm MMA戦績:3戦1勝 (1KO)1敗1分

