「1年前は一番悔しかった。今の僕は当時とはケタ違いです!」
──KNOCK OUT出場は6月の常葉で、柚子貴戦での1RKO勝利以来。その後7月に他団体で王座を獲得しての今回ですよね。まずは常葉での一戦を振り返ると?
蒔 あれが今年一発目の試合だったので、練習もけっこう追い込んでやってたんですけど、オープンフィンガーグローブ(OFG)だったし、福島もノクタゴンも初だし、どういう感じかなと思ってたんですけど、うまくパンチが入ってよかったです。
──そこまで半年空いたのは、何か理由があったんですか?
蒔 大学をやめる・やめない問題があったんですよ。また留年するのか、もうやめるのかという期間が年明けから始まって、それでちょっと試合ができなかったですね。
──もちろんやめるとなると、周囲の反対もあったと思うんですが。
蒔 でも、この話自体が2回目なんですよ。1回目の去年、けっこう話してるので。だからある程度冷静というか。いや、けっこう怒られましたけど(笑)。
──やっぱり怒られたんですね(笑)。
蒔 怒られたのは怒られたんですけど、もうちょっと覚悟してたところもあって。まあ、リハビリテーション学部理学療法学科というところに通っていて、理学療法士を目指していたので、親からすれば国家資格を取って手に職つけて……っていう考えだったんですよ。それに比べればキックボクシングって……みたいな。僕自身もそうですけど、プロになると思ってなかったので。
──でももう、本格的にそっちを選んだわけですからね。
蒔 はい、そうですね。もう今は好きなことやらせてもらってるし、実際楽しいです。自分としては本当にうれしい限りですね。だから結果を出していかなきゃいけないっていうのもあります。もちろん応援もしてもらってるし、結果出すぞっていう気持ちは今はすごく強いです。
──7月の王座決定戦はどうでしたか?
蒔 王座決定戦も初めてだし、5Rだったのでそこも不安だったんですけど、一応いけたので、自信につながりましたね。
──チャンピオンになって、気持ちの面では変わりましたか?
蒔 自覚はあるんですけど、強い選手は他に本当にいっぱいいるので、ここで満足してるようじゃダメだなっていうのが大きいです。
──しかしデビュー2戦目がONEで、3戦目が初のKNOCK OUT(川野龍輝戦)。4戦目が代々木第二。5戦目が石川戦で国内初黒星。7戦目が初横浜武道館で、8戦目が初常葉。9戦目が初王座決定戦で、そして今回が初の再戦。10戦の中に、すごくいろんなことが詰まったキャリアですよね。
蒔 本当にそうですね。僕もデカい大会に何回もボンボン出させてもらうとは思ってなかったので、うれしいです。
──今回は1年ぶりの再戦で、国内初黒星の相手とのリベンジマッチっていう形です。改めて前回の石川戦を振り返ると?
蒔 石川選手はすごいベテランで、対策されたというか、カーフキックで足をけっこう効かされちゃって。そこからもう全部ペースを握られちゃった感じでしたね。
──思っていたような試合をさせてもらえなかった?
蒔 そうですね。そういう意味ではONEでの負けよりも悔しかったです。ONEで負けた時はKO負けだったのもあって、変な言い方だけど、2戦目だし、ONEだし、しゃあねぇみたいな。その後も気持ちをバッと切り替えられたんですけど、石川選手の時は判定までいって、でも脚も動かないし。記憶もしっかりあるっていうので、もっとこうしたらよかった、ああしたらよかったというのもあって、悔しさの質が違う感じでしたね。
──ONEが初KO負けで、石川戦が初判定負けなんですね。だからこそ、今回やり返したい気持ちは強いですよね。
蒔 いやもう、ハンパなく強いですね。
──今回、一番気をつけたいところは?
蒔 やっぱり一回効かされてるカーフキックには注意しないといけないと思うんですけど、石川選手って首相撲からヒザとかヒジとか、メチャメチャ得意じゃないですか。あれもけっこう警戒してる部分ですね。
──そこへの対応という点では、1年前の自分と比べてどうですか?
蒔 もう、ケタ違いに違いますよ。あの負けがもうずっと心に残ってるので。逆にあそこで対戦して、俺を負けさせてくれてありがとうございますっていう感じですね。あそこで負けてレベルアップできたと、僕は思ってるので。そして、そこからバーッと4連勝して今回の再戦を迎えられるので、楽しみにしててくれたらうれしいなと思います。
──石川選手は6月に乙津陸戦がありました。あの試合はどう見ましたか?
蒔 壱・センチャイジムさんの試合があったので、会場で見てたんですよ。メッチャ石川選手のペースだなーって思ってたから、最後はちょっと悔しい気持ちになりましたね。やっぱり僕は負けちゃってるので、石川選手に勝ってほしい部分もあったので、悔しいって思うほうが大きかったです。
──石川選手もそこまでずっと連勝で来てたわけですもんね。
蒔 そうなんですよ。僕、石川選手が10連勝している内の1勝に入っちゃってるんですよ。そこも悔しくて。
──ではそういったところも全部踏まえて、今回はどういう試合にして、どう勝ちたいと思っていますか?
蒔 今回はもうとりあえず勝ちたいです。もうどういう試合とか分かんないですけど、とりあえず何でもいいから勝つというか。やっぱり結果が残っちゃうじゃないですか。どんなにいい試合しても負けは負けだし。すごいテクニックを使って打ち合わないで判定勝ちしても、勝ちは勝ちなので。だからとりあえず、本当に「勝つ」のが一番大事ですね。
──何が何でも勝つために、一番必要だと思うものは?
蒔 必要なのはやっぱり気持ちですね。「どっちでもいいや」とかだと絶対負けちゃうし。「勝たないと」っていう気持ちを奮い立たせないと、そこから結果がついてくると思うので。それでうまい形でいけばKOになると思うし、判定で圧勝というのもあるだろうし。やっぱり気持ちがないといけないなって思います。
──ここで勝てばKNOCK OUT王座挑戦も見えてくるかなと思いますが。
蒔 もちろん挑戦させていただけたらうれしいんですけど、僕は一つのことしかできないので。2つ同時にはできないから、とりあえず目の前の試合を毎回準備して、最善を尽くす。そこからはあとは山口元気代表に任せて、試合を組んでいただけたら、タイトルマッチもやるし、何でも試合をこなしていくという感じですね。
──大学とキックも、一つに絞ったわけですしね。
蒔 そうですね。この前『KNOCK OUT STYLE』を見ていたら、石川選手は「最短ルート」とか言ってたので、あんまり僕は眼中にないと思うんですよ。そう見られて当然だなって思うけど、見てろよっていう感じです。
──では最後に、今回の試合で一番注目してほしいというポイントはどこでしょう?
蒔 勝ちに行く姿勢を見てほしいですね。そうすれば結果もついてくると思うし、お客さんの記憶にも残るかなって思うので、一試合一試合に懸けるこの気持ちの部分を、まず見てほしいです。
──分かりました。ありがとうございました!
プロフィール
蒔・センチャイジム
所属:センチャイムエタイジム 生年月日:2003年7月8日生 出身:東京都 身長:168cm 戦績:9戦7勝(4KO)2敗rnJAPAN KICKBOXING INNOVATIONバンタム級王者

