この試合は本戦では決着が付かず、延長戦の末に判定2-1でKihoが勝利したが、試合後にKNOCK OUTプロモーションは審判団に対し、「当該試合の採点は、KNOCK OUT公式ルールの採点基準、及びKNOCK OUTが掲げる『倒しに行く姿勢を最大限評価する』という理念から大きく逸脱したものであり、当イベントの根幹を揺るがしかねない重大な問題であると認識」し、正式に異議申し立ての抗議文が出されていた。

会見に出席した山口元気は「通常は判定を不満とする所属ジム会長、ジムが異議申し立て書を出すのですが、運営するプロモーションが異議申し立てを出すことは前代未聞というか、多分これまでに一度もないと思います。なぜ僕がそこまでしたかということを説明させてもらいます。今年からUNLIMITEDルールの大会をやっていく中で、JMOC(Japan MMA Officials Committee/日本MMA審判機構)さんとルール、ジャッジ、採点基準に関してミーティングを重ねてルールを作っていく中で、倒しに行く姿勢を最大限評価していこうと。僕はこれまでにKNOCK OUTのRED、BLACK、UNLIMITED、この3つのルール全て共通の採点基準、一番大きな命題基準にして、KNOCK OUTというイベントの名前通り、倒しに行く姿勢が評価されるということを決定しました。そういったものを定義していたにも関わらず、今回の判定というのは、KNOCK OUTとして僕は存在意義を問われるぐらいの判定内容だったかなと思います。例えば、K-1さんはその団体が考える判定基準というのが明確にルールブックに載っているわけです。団体がこういう競技にしていきたいというルールの中で、ルールを制定して、それを審判団にお任せしています。お任せした以上は、一切団体は口を出してはいけない。これは三権分立で、主権を犯さない重要なところだと思います。本来であれば、運営が『判定はちょっとおかしいんじゃないか』と抗議してはいけないことだとは思うんですけど、KNOCK OUTとして今年新たに明確に打ち出した判定基準とはちょっとずれているんじゃないかなと思ったことから、僕は出させていただきました」と異議申し立てを出した経緯を説明。
そして、その異議申し立てに対する審判団からの回答文が読み上げられ、その内容は以下の通り。
~山田真子を勝者としたジャッジの回答~rn1、2ラウンドともに両者手数が少なく有効打に乏しいためイーブンとしました。3ラウンド、前に出て攻めてパンチを当てていく山田選手に対して、Kiho選手は組み付きが多くなります。よってこのラウンドは山田(10-9)。3ラウンドは、両者に減点1があるため合計29-28で山田。延長戦は積極的に攻める山田のパンチが何度かKihoの顔面を捉えます。このまま山田の有効打はないですが、Kihoも下がりながらの弱い攻撃です。組み付きも多いため、延長戦も山田を勝ちにしました。
~Kihoを勝者としたジャッジ2名の回答~
ジャッジ1人目:1ラウンド、両者の手数が少ない中、Kihoの攻撃の方がヒットしていたと判断。2ラウンドも同じ展開と見ました。1、2ラウンドはKiho。3ラウンド目は山田のパンチがヒットしていたために山田。お互い減点1があったので、28-27で本戦Kihoにしました。延長は確かに山田の方が倒しにいく戦い方だと思いましたが、有効打としてはイーブン。最終的にいろいろ技を出していたKihoの勝ちとしました。山田の方が前に出ていましたが、Kihoも距離をとって攻撃をしていたということからKihoの勝ちとしました。
ジャッジ2人目:山田とKihoの両選手がダメージを与えたラウンドはないと判断しています。ただし、Kihoがいろいろな技を出して手数が多かった。山田は終始プレッシャーをかけていたが、技を出している場面が少なかったということ。Kihoは下がりながらも様々な技を出していた。以上の観点からKihoの方がパフォーマンスは良かったと判断した」
和田良覚審判部長とジャッジ2名と話し合った結果、ジャッジ2名とも判定を覆すことはないという回答となり、山口代表は「審判部が判定結果を覆さないという答えをした以上、僕らがこれ以上、判定結果を変えることはできません。ルール上、審判団が出した結果に対して不満があれば、異議を唱えて会議してもらって判定が覆るか覆らないかを議論してもらうという問題提起はできます。それは各ジム、各選手に託された権利ですが、僕らはその審議結果に従うことがルールとなっています」と変わらずKihoが勝利し、チャンピオンとして認定されるとした。

この結果を受けて、12月30日の代々木大会でKihoの初防衛戦として山田とのダイレクトリマッチを行うことも決定。今後は、タイトルマッチに関しては、総合格闘技団体「DEEP」で導入している5名のジャッジ制の導入を検討。そして、グローブに関しては、12月大会では通常のグローブとは違う女子選手用の6オンスグローブを採用し、来年までには、女子の選手50kg以下の選手の試合に関しては4オンスのグローブを採用することも検討していくという。rnrn12月に再戦が決定した山田は「12月に倒さなきゃ勝てんちゃろ? という感じなので絶対に倒して勝ちます」とKOを予告したのに対し、Kihoは「まずは応援してくださったファンの皆さん、そして会場まで来ていただいた皆さんには、感謝の気持ちと、このような結果になってしまったことを申し訳ない気持ちでいっぱいです」と謝罪した。

今回のジャッジに関する結論が出たことを受け、山田は「試合が終わって、U-NEXTや会場で自分たちの試合を見てくれていた人たちのリアルな声が全てだと思っています。今回判定は覆らなかったけど、自分にとってはベルト以上のものをちゃんと得られたのかなと。山口代表からも『勝ってたよ』と試合後に言っていただき、判定が覆らなかったことに対しては、今更何も言う必要もないかなと思ってるし、次に切り替えてもう戦闘モードなんで」というと、Kihoは「そういう声が答えだと思うし、自分的にはこれで勝ってチャンピオンになったと思っていないので、ベルトを返上したいと思ってますし、フラットの状態で試合ができるといいなという感じです」とベルトを返上して再戦に臨みたいという。
これを受けて、山口元気は「Kiho陣営の方からベルト返上したいという要望を受けましたが、審判団から回答が出た以上、ベルトを返上するというのは、階級をアップするか、もしくは引退するかのどちらかしかありません。ベルトを返上して即ダイレクトリマッチというのはルール上ないことなのでできません。逆にちゃんと責任を持って(防衛戦を)やってくださいと、そういう回答をしました」と説明した。

再戦でどういう勝ち方をしたいかと聞かれた両者。山田は「倒します。それのみです」といい、Kihoは「自分もしっかり明確な形で試合を終わらせないと、また同じような結果になるので、しっかり倒して勝ちたいと思います」と完全決着を誓った。

