KNOCK OUT年末恒例のビッグマッチ、12.30代々木大会。
本大会の注目試合を 名だたる格闘メディアにコラム執筆を依頼、
今回はMMAPLANET 高島学氏によるコラムを公開いたします。
高島学氏には KNOCK OUT-UNLIMITEDフェザー級王座決定戦
「カルロス・モタvs有川直毅」がどう映るのか。是非ご覧ください。
「有川がベルトを手にするには、先手必勝。最初に暴れること」
KNOCK OUT UNLIMITEDルールに2階級目の王座が制定され、カルロス・モタと有川直毅の間でベルトが争われることとなった。米国とブラジルのMMA界でUFCに選手を送り出すフィーダーショーの最王手といえるLFAでフライ級王座を奪取し、UFCと契約したMMAキャリアを持つモタ。他方、有川はZSTからパンクラスをメインに戦績を積み重ねてきた総合格闘家だ。
モタのMMAレコードは8勝2敗。UFCが1試合、LFAが4試合と8勝5敗1分の有川とは試合数では劣るものの素直に戦ってきたステージが違うと断言できる。ステージが違う――それは対戦相手が違う、つまりは蓄積されたMMA戦闘値に差があるということになる。
他方、UNLIMITEDではモタがワンマッチを2試合(3分3R)、有川はトーナメントで3試合(※2分3R)を戦っている。無制限スタンディングバトルにおいてモタは栗秋祥吾、中村悠磨というキックボクサー&プロではMMAを戦っていないMMAファイターから判定勝ちを収めている。

対して、有川は9月に57キロ8人制ワンデートーナメントでキックボクサー川野龍輝を初戦で、今村流星には決勝で勝利、MMAファイターの山野邉嵐を準決勝で倒し優勝を果たした。モタ、有川とも現状のUNLIMITEDにおいてスキルセットで優位に立てる立ち技ファイター、経験値でアドバンテージのある立場でMMAファイターに勝っているわけだ。

そんなUNLIMITED無敗のMMAファイター同士のタイトル戦は、MMAにおける強さで計ればモタ有利は絶対だ。ただし、UNLIMITEDルールを脳みそと体に落とし込んでいるのは、有川といえる。モタの過去2試合は、無制限の打撃戦ではなく制限のあるMMAを戦い、無邪気にサッカーボールキック、踏みつけを駆使していたような内容だった。
モタのUNLIMITEDはMMAの地の強さで勝利している。一方で有川は1Rが2分というフォーマットだったこともあり、しっかりとUNLIMITEDルールを理解し、MMAの技術を使ってUNLIMITEDルーツという別競技を戦っていた。構え&ステップに大きな違いがあったわけではない。ただしキックボクサーを相手にし、テイクダウンを仕掛けられることがないことを前提があるだけで有川の踏み込みの鋭さ、一振りの勢いがMMAの時以上に感じられた。
キックの選手が有川のようなMMAファイターと戦った時は、まず距離感に戸惑う。MMAの距離はキックの1.5倍はあるだろう。そこから思い切って踏み込んでくる有川の動きに、キックの選手は慣れていなかった。加えてテイクダウンを警戒することで、彼らのガードが甘くなり、有川のパンチの精度が上がる。そこからレベルチェンジ、テイクダウンも勢いで決めることができた。
この有川の戦いは、モタには通用しない。モタはMMAの距離に慣れており、ステップバックだけでなくカウンターを打ち込むことができる。打撃を見せてのテイクダウン防御も日常、クリンチの攻防はお手のモノだろう。
では有川に勝機はないのか。決して、そんなことはない。KNOCKTAGONという舞台が有川に味方をするに違いない。モタにはKNOCKTAGON、いやロープの耐性がまだ少ない。ケージの感覚で戦い、背中でグリップを組まれる感覚はまだ養われていないことが想像できる。
ならば、有川がやるべきことは恐れず距離を詰めて、ボディロックに持ち込むことだ。寝技に慣れているモタだからこそ、しがみつくことなく柔術やスクランブルを仕掛ける。それこそ有川が立たれても良い気持ちで拳、ヒジ、ヒザ、あるいは踏みつけが使える局面になる。
3分×3Rのノンストップファイトは、MMA以上に両者を疲弊させる。ならば先に動くべし。攻めて疲れるのと攻められて疲弊するのは精神面への影響が違う。開始直後に組んで倒す、立たれても良いから殴り蹴りと暴れることが、有川をベルトに近づかせる。それができなかった場合、57.5キロから恐らくは65キロ近く戻してくるモタに押し切られる。先手必勝とボディロック、それこそが有川のRoad to UNLIMTED王座の戦い方だ。
執筆
MMAPLANET
高島 学

