KNOCK OUT年末恒例のビッグマッチ、12.30代々木大会。

本大会の注目試合を 名だたる格闘メディアにコラム執筆を依頼、 
今回はMMAPLANET 高島学氏によるコラムを公開いたします。

高島学氏には KNOCK OUT-UNLIMITED-77.0kg契約
 「宮原穣vsスパイク・カーライル」がどう映るのか。是非ご覧ください。



「総合空手家=宮原穣とMMAファイター=カーライル、勝負の鍵は?」



KNOCKOUT UNLIMITEDルールの多様性を体現できる1人の格闘家の参戦が決まった。それが宮原穣である。幼少期から極真空手を学び、海外から極真のリユニオンを謳ったWKUの世界大会で準優勝、そのWKU系KWFカラテグランプリで優勝経験がある宮原は、ブルガリアのキック団体SENSI、空道、北米ではカラテ・コンバットで戦ってきた。

 

フルコン特有の顔面へのパンチと掴みのない接近戦。グローブをつけて顔面パンチを駆使するキックボクシング。スーパーセーフ着用で組み&寝技が許された空道。さらにすり鉢状のマット空間で、MMAグローブをつけテイクダウンとパウンドが許されたカラテ・コンバット。全てのルールで結果を残す、まさに総合空手家という名が相応しいファイターだ。

 

宮原が優れているのは極真の技術をベースに、違うルールの戦いを経てテクニックの幅を広げ、体に落とし込んでいる点にある。キック、空道、カラテ・コンバットで戦ってもキックで空道でもない、いってみれば宮原流格闘術をルールにアジャストして戦ってきた。

 

よって技の引き出しが多く、また選択眼も持っている。そんな宮原の打撃で最も期待したくなるのが、倒せる左右の上段回り蹴りだ。今回の対戦相手スパイク・カーライルは、スイッチヒッターでパワフルな打撃の持ち主だが、胸がつくかという距離でハイキックを受けた経験は(※この試合が決まるまで)練習でもないだろう。

 

近づけばテイクダウンがある――この意見には首を縦に振るしかない。それをいえばフルコンカラテでも、宮原の距離で上段回し蹴りを左右で決めることが容易いわけがない。では、なぜ彼の蹴りは決まるのか。それは攻撃を散らし、相手の意識にないタイミングで頭部に蹴りを入れることができるからだ。

 

UNLIMITEDルールになると、彼が過去に戦ってきた試合以上に攻撃の幅が広がり、攻撃を散らすことが可能だ。特に胸が合った状態になると、高く上るヒザとの連係は絶対的に見ものだ。加えて、内回し蹴りもカーライルは予備知識には、ほぼないことが予想される。顔面パンチのある戦いで、これらの蹴りを駆使できる宮原は、より遠い蹴りのレンジで戦うこともできるので、カーライルのMMAの距離=打撃と踏み込みにも対応できるだろう。

 

対して今や東京在住で、マックス・コクエイという頭脳を持つカーライルが如何にMMAをUNLIMITEDで駆使するか。上にあるようカーライルの打撃の距離は、宮原の蹴りの距離だ。ただし、組みという部分では宮原は圧倒的に実戦経験が少ない。

 

それでもテイクダウン絶対というファイトは厳禁。いくらカーライルが倒しても、抱えられてブレイクが掛かる。こうなると自らの攻撃で削られてしまう。ならば打撃勝負をするのか。

 

ここに関しては、テイクダウンを意識させオーバーハンドでダウンを奪うこともあるだろう。ただ、パンチはあくまでフェイクの一環で構わない。では一体何が、カーライルの勝機となるのか。それはダブルレッグ・アタックだ。シングルレッグは足をとってもヒザを蹴られるリスクを避けるために、使う必要はない。ヒザ蹴りのクリーンヒットの確立は低いが、テイクダウンは非効率的なのは先に説明した通り。

 

カーライルに必要な攻撃手段は、ダブルレッグ。ただしテイクダウンではなく、狙いはバックテイクだ。そうキム・ギョンポをRNCで落とした、あのバックポジションがカーライルにとってUNLIMITEDを戦う上で至高のポジションとなる。

 

絞めと関節が禁止のUNLIMITEDだが、ボディトライアングルで動きを封じ込めばホールドされることなく、心置きなくパウンドやエルボーを打ち込める。ダブルレッグとボディロックは一瞬、ダックアンダーで背中に回る。それがカーライルにとって、UNLIMITEDを戦ううえでオアシスだ。

 

宮原の上段回し蹴りか、カーライルのボディトライアングル・バックコントロールか。総合空手家とMMAファイターの戦いは、この勝負を決める動きの前――一瞬の接近戦から目を離してはならない。



執筆
MMAPLANET
高島 学