KNOCK OUT年末恒例のビッグマッチ、12.30代々木大会。
本大会の注目試合を 名だたる格闘メディアにコラム執筆を依頼、
今回はMMAPLANET 高島学氏によるコラムを公開いたします。
高島学氏には KNOCK OUT-UNLIMITED-68.0kg契約
「松嶋こよみvs漁鬼」がどう映るのか。是非ご覧ください。
「制限をかけたLIMITEDな戦いが勝利をもたらす」
7月の後楽園大会に続き、松嶋こよみがUNLIMITEDルールに挑む。UFC一択のMMAファイター人生を続けるなかでLFAと契約も、ビザが取得できず1年以上も実戦から離れていた。そんな松嶋に救いの手を差し伸べたのが、KNOCKOUT山口元気代表だった。
ジャン・チャオ戦で松嶋は、KOという結果こそ残せなかったもののMMA以上に振り切った動きを見せていた。スピニングバックエルボー、ダブルレッグから抱えてあげて豪快な後方へのスラム。さらには胴回し回転蹴りと、まさに鬱憤を晴らすかのような戦いぶりだった。



MMAを見据えた試し斬りだけでなく、寝技のブレイクを見込んだMMAではリスキーな動きでインパクトを残した松嶋は大会MVPも獲得している。その後、11月のRIZIN神戸大会でヴガール・ケラモフ戦が決定も、こともあろうか大会前日にケラモフの体調不良でキャンセルに。そのまま大晦日にリブックがなされるのか注目されていた。
そのような状況下で決まった2度目のUNLIMITEDルール=漁鬼戦だ。KNOCKOUT BLACKスーパーウェルター級暫定チャンピオンの漁鬼は身を削る殴り合い上等ファイターで、組み技&寝技の経験が全くない。会見でも「今さら練習してもテイクダウンとか切れるわけがないので、何も考えずにパンチを振り回すだけ。ディフェンスは少しやりますが、MMAの練習を1カ月したところで松嶋選手に寝技とかで勝てるわけがないので、最小限の練習しかしない」と初挑戦となるUNLIMITEDルールと松嶋戦について語っていた。
ある意味正解で、ある意味根本から見直した方が良い考えだろう。まずMMAの練習はする必要はない。最小限すら必要ない。いうとキックボクシングの練習も松嶋戦まではミットとバッグで十分だろう。テイクダウンを狙う相手に打撃を入れる練習など、テイクダウンを切る練習をするのと同様に時間の無駄使いになる。
会見から1週間が過ぎ、試合まで3週間という時点でこの原稿を書かせてもらっているが、漁鬼がすべき練習はジャンピングガード一点買いで構わない。今すぐ、それも柔術道場に通うのではなく所属するSHINE沖縄ジムから車で20分のTHE BLACKBELT JAPAN沖縄か、同じく26分のCROSSxLINEでMMAファイターを相手に、ジャンピングガードの手解きを受けること。
まずは立っている相手に飛びついてクローズドガードを取る。続いてテイクダウンを狙った相手にクローズドガードを取る。そのまま、30秒間しがみつくという動きを試合前日まで何百、何千回と繰り返す。少しでも脚で胴体を挟む動きと、ワキを差して頭を引き寄せてクラッチする動作に筋肉を馴れさせ、そのためのスタミナを創る。それが最善策だ。
スタンドの攻防は、漁鬼が言ったように何も考えない――つまりMMAを考慮することなく、いつものようにローを蹴り、打ち下ろす右ストレートを振り抜くこと。組まれれば引き込む。そしてブレイクを待つ。倒されても同じ。立てばキックボクシング。UNLIMITEDルールを戦う手札が圧倒的に少ない漁鬼は、戦法も選択肢が限定されるだけに打の圧と、ブレイク狙いで松嶋を心身ともに削りたい。



松嶋はUNLIMITEDルールではMMA以上に使える技を持つ。ただし、いつも以上にインパクトを残す勝利を欲しているに違いない。それだけに選択ミスをする可能性も出てくる。漁鬼と共に出席した会見で松嶋はメディアの誘導尋問にひっかかったように大晦日に関して、「ケラモフ以外の相手だったので断った」という言葉をしてしまった。未発表の交渉事、裏事情を公の場で話す必要はない。そうなるとRIZINの榊原CEOにしても「ごっつい相手を用意したのに。なんでだろうね」とメディアに漏らして然りだ。
松嶋はプロファイターとして、明らかに適切でない言動をしたわけだ。この選択眼では、自由なUNLIMITEDルールでカードの切り方を間違えることが危惧される。特に漁鬼がクローズドガードを続け、ブレイク。その繰り返しになると、荒い打撃勝負という選択をする可能性も出てくる。
松嶋は打撃だけで漁鬼に勝てる力を持っているかもしれない。ただし、勝ち負けを第一に考えると相手が唯一勝てる土俵で戦う必要はない。それなのに謝った選択をする可能性が彼にはある。
結果、ロイヤルストレートフラッシュを狙う松嶋を漁鬼がエースのワンペアで倒す可能性が出てくる。故に両者のUNLIMITEDは――松嶋としては精神的な部分で、漁鬼は技術的に制限をかける。そうLIMITEDな選択が、勝利をもたらす戦いとなろう。
執筆
MMAPLANET
高島 学

