KNOCK OUT年末恒例のビッグマッチ、12.30代々木大会。

本大会の注目試合を 名だたる格闘メディアにコラム執筆を依頼、 
今回はMMAPLANET 高島学氏によるコラムを公開いたします。

高島学氏には KNOCK OUT-UNLIMITED-61.5kg契約
 「大雅vsプンルアン・バーンランバー」がどう映るのか。是非ご覧ください。



「MMA習得中=大雅vs ムエタイ・ルネッサンス=プンルアン」



KNOCKOUT 2025年の総決算「K.O CLIMAX 2025」では、四人制ワンナイト・トーナメントのフォーマットを採り入れた60キロ級Tの決勝を含め全9試合のUNLIMITEDルールの試合が組まれている。

 

昨年のK.O CLIMAXの3試合と比較しても3倍に膨れ上がったのは、UNLIMITEDが如何に存在感を示すようになったのかを顕著に表している。そんなUNLIMITEDについにタイ人が参戦を果たす。プンルアン・バーンランバーの挑戦は、立ち技打撃格闘技の最大公約数を標榜するUNLIMITEDに欠かせないピースが加わることを意味する。

 

しかもプンルアンはあのランバー・ソムデートM16の教え子と聞けば、20世紀終盤のキックファン、21世紀序盤にMMAを追っていた世代は胸躍らせるに違いない。

 

ソムデートは1998年に初来日を果たすと、日本立ち技界のメジャーシーンで6試合を戦い、無敗。KNOCKOUT山口元気代表を含め5人の日本人選手から4つのKO勝ちを収めている。

 

その後、日本でジムを開いたソムデートはMMAシーンに活躍の場を移す。そしてムエタイと柔術をミックスさせたスタイルで、13勝3敗というレコードを残し、初代修斗世界フライ級(現ストロー級)王座を獲得。当時アジア・オセアニアにおいてUFCへの登竜門に位置づけされていたPXCでは、後のONEファイター=散打出身ロビン・カタランをRNCで下している。

 

タイで誰よりもMMAに通じていたランバーのDNAを持つプンルアンは、ムエタイ戦績89戦74勝15敗。とにかく積極的なファイターで、ONE Friday Fightsへの出場数も10試合以上を数え、魅せる打ち合いができるナックモエといえる。最近はKO負け、特に逆転KO負けが目立ってはいるが、グラウンドで殴る・蹴る、ヒザ蹴りが許されたUNLIMITEDでは、最初のチャンスで相手を仕留め切る手段がムエタイと比較して膨大に増えるだけに、プンルアンにとって最適のルールといえよう。

 

対する大雅はK-1とRISEでスーパーフェザー級のベルトを巻き、去年の大晦日のRIZINでMMA転向を果たした――ものの同じ立ち技出身の梅野源治、栗秋祥梧に判定負けを喫しており、まだ勝利を手にできていない。

 

ただし過去2戦を見る限り、大雅が真剣にMMAに取り組んでいることは見て取れる。スタンドでダブルレッグ・テイクダウン、下になると三角などサブミッションの仕掛け、ハーフから潜りやレッスルアップ&スクランブルと、打撃以外で必要なMMAに真正面から向き合っていた。

 

が、現状では組みのスタミナ不足は否めない。知識はあり、しっかりと練習をしているであろう大雅だが、相手のリアクションに対して耐性が低い。結果チャレンジすることで、墓穴を掘ることが多く見られた。UNLIMITEDでの経験をいかし、上になると間髪入れず殴り、サッカーボールキックを狙った栗秋とは対照的なスタンスでMMAを戦って敗れたといえる。

 

とはいえ、そこはMMAの経験値を考えると当然といえる。そんな大雅の積極性が、墓穴を掘ることにならないのがUNLIMITEDルールだ。

 

対戦相手がムエタイ戦士プンルアンであるからこそ、大雅はどんどんMMAを仕掛けるべき。ミスがあってもブレイクに持ち込み、立ちで仕切り直せば良い。逆にUNLIMITEDルールだからこそ、大雅が気をつけないといけないのはムエタイが現在の形になるなかで、排除した技術だ。

 

つまりは崩した後の追撃。崩す途中でヒザをついた相手への攻め、だ。本来、格闘競技になる以前の格闘術は打撃と組みを分け隔てることなどなかった。ムエタイ、空手、柔道、柔術は全局面戦闘術として実戦のなかで活殺術として伝承されてきた。

 

打撃から組み。崩し、投げ。組み伏せ、倒した状態での打撃は何もMMAの専売特許ではない。しかし、競技のなかでその部分をどこよりも追求しているのがMMAだ。そんなMMAを習得中の大雅に対し、プンルアンが全局面格闘技術としての古式、いや本来のムエタイで挑む――ことで、どのような化学反応が見られるのか。これこそUNLIMITEDの可能性を探求できる、ファイトとなろう。



執筆
MMAPLANET
高島 学