KNOCK OUT年末恒例のビッグマッチ、12.30代々木大会。

本大会の注目試合を 名だたる格闘メディアにコラム執筆を依頼、 
今回はゴング格闘技の熊久保英幸氏によるコラムを公開いたします。

熊久保英幸氏には KNOCK OUT-BLACKスーパーウェルター級タイトルマッチ
 「海人vsシッティチャイ・シッソンピーノン」がどう映るのか。是非ご覧ください。



「海人が2026年、世界に出て行けるかどうかの試金石。ポイントは1R」
 


 11月24日に東京・国立代々木競技場第二体育館で開催された『~SHOOTBOXING 40th Anniversary~S-cup×GZT 2025』のメインイベントで、エンリコ・ケールにダウンを奪っての判定勝ちでリベンジに成功した海人は試合後マイクで「今後、僕自身、世界最強を目指しているので本格的に来年からは世界最強を証明できる場所、そのベルトがあるので、来年はそこに本格的に動いて行ってそこに挑戦していきます。そしてSBエースという座を次の時代の若いシュートボクサーたちに譲りたいと思っています」と、戦いの場所を移すことを宣言した。

 その海人が2025年最後の戦いの場に選んだのは、KNOCK OUTだった。海人は2021年2月、日菜太を破ってREBELS-BLACKスーパーウェルター級王座を奪取。その後、REBELSがKNOCK OUTに統合されたことに伴い、初代KNOCK OUT-BLACKスーパーウェルター級王者に認定された。防衛戦こそ行っていないが、海人はコスチュームのベルトに自身がタイトルを保持する「シュートボクシング」「KNOCK OUT」「RISE」の3団体の名を刻み、自身が3団体を背負って戦っていることを示していた。

 王座奪取から約5年近く、2026年から本格的に世界進出を果たす前に、海人がKNOCK OUTのリングに帰って来る。そこに自らの試金石となる戦いたい相手がいたからだ。KNOCK OUTがシッティチャイとの契約を発表すると、海人はすぐに「戦わせてほしい」と表明。自分が世界に通用する男なのかどうか、それを証明するにこれ以上ない相手だからである。

 キックボクシングファンに、今更シッティチャイを説明する必要はないだろうが、ざっと経歴を紹介すると――タイ人では大型選手となるため早くから海外で戦い、フランス、イタリア、中国などで活躍。あのチンギス・アラゾフ、マラット・グレゴリアン、アンディ・サワーからも勝利を収めている。

 ムエタイからキックボクシングに転向し、世界各国の強豪が集ったKunlun Fightの2016年世界トーナメントで優勝、同年にはGLORYでも世界王者となった。間違いなく70kg級世界最強の男として君臨し、2020年5月からはONE Championshipに参戦。世界各国の強豪たちとしのぎを削り、2024年6月にONE初参戦となった野杁正明から勝利を収めたことは記憶に新しい。

 そのシッティチャイがKNOCK OUTに来る。対戦相手は海人しかいない。ONEでの終盤は黒星が増えたとはいえ、まだ日本人選手の誰もが成し遂げていないシッティチャイ越えの期待がかかるところだ。

 シッティチャイはサウスポーでタイ人らしく左ミドルを軸に戦う選手ではあるが、長年のキックボクシングの経験で近い距離・遠い距離でもパンチで戦うことが出来る。強い左ミドルに耐えてパンチの距離に入ったとしても、そこにはパンチが待ち受けているというわけだ。サウスポーの定石である左ミドルからの左ストレートは要注意。

 海人はONEでの試合で、サウスポー(スイッチするが)のモハメド・シアサラニに敗れた。シアサラニの左ミドルで距離をとられ、打ち返しや打ち終わりを狙われ手数も少なかったのが敗因だ。ケールとの再戦では1Rから手数多く攻めてスロースターターな部分は克服していたが、vs.ムエタイに絶対必要な「攻撃を受けたら必ず返す」「自分の攻撃で攻防を終わらせる」ことが勝利のカギとなる。

 長年の激闘で打たれもろさは確実にあるシッティチャイに、海人のシャープなキレのあるパンチが当たればKO決着も十分にあり得る。しかし、それだけのキャリアのあるシッティチャイだけに、自分の打たれもろさを自覚してそれをカバーする戦い方を今回はしてくるのではないか。

 ゲームメイクが上手いシッティチャイを相手に、ペースやリズムを取らせるのは危険。この試合、1Rが勝敗を決めるポイントになると見た。

 

執筆
ゴング格闘技
熊久保英幸