KNOCK OUT年末恒例のビッグマッチ、12.30代々木大会。

本大会の注目試合を 名だたる格闘メディアにコラム執筆を依頼、 
今回はゴング格闘技の熊久保英幸氏によるコラムを公開いたします。

熊久保英幸氏には KNOCK OUT-BLACK女子アトム級タイトルマッチ
 「Kiho vs 山田真子」がどう映るのか。是非ご覧ください。



「単なる決着戦ではない。プロファイターとしてのポテンシャル、真価を試される厳しい一戦」
 

 因縁の決着戦来たる! 9月に「KNOCK OUT-BLACK女子アトム級王座決定戦」で対戦したKihoと山田真子は、延長戦の判定2-1でKihoが勝利して新王座に就いたが採点で物議を醸し、即座に今回の再戦が決定した。

 その初対決では、終始前に出る山田にKihoが前蹴りと右ミドル&ローで応戦。2Rに山田がKihoにロープを背負わせての左右フックの連打、3Rに両者とも相手のパンチを当てさせない中、山田が右ストレートでKihoにロープを背負わせた。本戦の判定は三者三様のドロー。延長戦では山田が左右フックをヒットさせ、Kihoは前蹴りで下がらせた。

 大会終了直後、山口元気代表はこの試合の採点結果について「当イベントの根幹を揺るがしかねない重大な問題」として、審判団に異議申し立てを行った。主催者が判定に関して異議申し立てを行うのは異例なことだ。

 延長戦でKihoの勝利を支持したジャッジの見解は「最終的にいろいろな技を出していたKihoの勝ちとした」「山田は前に出ていたが手数が少なく、Kihoは下がりながらも様々な技を出していた」というもので、採点が覆ることはなかったが、両者とも納得がいかないこともあり、ダイレクトリマッチで決着をつけることとなった。

 

 選手には相性というものがあり、何度やっても噛み合わない選手同士は噛み合わない。両選手とも「今回は明確な差をつけて勝つ」と意気込んではいるが、再び噛み合わない試合で拮抗したジャッジ泣かせの展開となる可能性は十分にある。

 しかし、だ。そこで「これは勝ったな」と思わせるインパクトのある瞬間を作り出せる選手こそが一流になれる。それは相手のワンミスによるものなのか、それとも戦略によるものなのかは蓋を開けてみないと分からないが、そのチャンスをつかみ取ることが出来た者が真の王者として今後輝くことが出来るだろう。

 再戦で強い選手というものも存在しており、どちらかがそうなるかもしれない。つまり、この一戦は単なる決着戦というわけではなく、プロファイターとしてのポテンシャル、真価を試される厳しい一戦でもあるわけだ。

 この短い期間で実力がそれほど伸びるわけがない。それはあくまでもこの期間に限った話で、実際にはそれまでの積み重ねというものがプラスされる。1年前から練習していたことが、ようやく試合に出るようになったという話を選手から聞いたことがあるだろう。練習してきたものが全てその試合に出るわけではなく、積み重ねてきたものが徐々に試合に現れるのだ。

 ここ一番でそれを出せる者が、名王者であったり、スターになれる。因縁の決着戦ということで注目が集まり、舞台は整っている。そこで主役になれるかどうかは選手次第だ。願わくば、女子のライバルストーリーというものがキックボクシングでは歴史を振り返ってみても数少ないため、「2人の試合がまた見たい」と思われるような素晴らしい内容で決着が付けばなお良い。

 今の若いファンにはどうでもいい話だが、かつて熊谷直子vs.藤山照美、RENAvs.神村エリカ、柴田早千予vs.グレイシャア亜紀という女子キックボクサーたちが男子にも引けを取らない注目を集めた。3試合(※RENAvs.神村はエキシビションマッチとして行われた)とも後楽園ホールがどよめき、揺れ、文字通り爆発した。

 ああいう女子同士の試合をまた見てみたいと、Kihoと山田真子に期待する部分はある。昔を懐かしむ老いぼれ記者、老害ライターなどと言うなかれ。その3試合は本当に凄かったんだから。
 

 

執筆
ゴング格闘技
熊久保英幸