「先輩と僕にとって選手として一緒に過ごしてきた最後の時間。先輩の最後のパンチを受けようと思います」

 

4・18「REMY presents KNOCK OUT.63 KNOCK OUT SPRING FES in OKINAWA」の[渡慶次幸平 引退記念スペシャルエキシビションマッチ/3分1R]で渡慶次幸平と対戦する鈴木千裕。千裕にとって渡慶次は苦楽を共にした兄貴分であり戦友。「僕がジムに入会してからの先輩とのストーリーの最後を飾る試合だし、思いが凝縮された最後の戦い」と心境を語った。

 

──今大会で渡慶次選手の引退記念スペシャルエキシビションマッチの相手に決まった時、率直にどんな心境でしたか?

「例えば先輩(渡慶次)にも、同じ階級でやり合ってきた思い入れのある選手っていっぱいいると思うんですよ。だけど、その中で下積みを一緒に過ごした自分を選んでくれたのは嬉しかったですね」

──鈴木選手にとって渡慶次選手はどんな先輩なんですか?

「振り返れば1日じゃ話しきれないんですけど、強いて言うなら反面教師でもありつつ…う~んお兄ちゃんですかね。もちろん悪いところも知っていて、今よりも殺気立っていて素行がよろしくないというか結構雑なところもあって、なんでこんなことすんだよっていう日もありました。でも、ちょっとずつ格闘技に救われていったというか、格闘技で活躍するたびに先輩も考え方が変わりましたし、僕にいろんなことを教えてくれたので、やっぱり反面教師でありながらお兄ちゃんですね」

──渡慶次選手がやんちゃだった若い頃から変わっていく姿も見てきたということですか。

「そうですね。初めて会った時は17歳で自分も同じように変わっていったんで、戦友とも言えるかもしれないですね」

──渡慶次選手は鈴木選手のことを「格闘技で食えない時期も頑張ってきた仲間」という言い方をしていました。

「下積みを一緒にできる人って少ないじゃないですか。初期から一緒にいてくれる人って、もう5人もいないと思うんですよね。そういった意味では僕らはしぶといなと思います。だから、まさか先輩が引退する日が来るとは思わなかったです。50歳、60歳になってもやってんのかなっていうイメージもありましたからね。ただ引退した後もいろいろ教えてくれると思いますし、ジムにも絶対いてくれると思うんで、縁が切れるっていうわけでもないのでそれは嬉しい限りです。でも、最後の締めはしっかり飾らないといけないと思うんで、試合が楽しみですね」

──渡慶次選手との思い出で特別記憶に残っていることはありますか?

「色々ありますけど、格闘技らしい話でめっちゃ面白かったことが一つあります。名前は忘れちゃったんですけど、もう引退していてパンチを振り回すキックボクサーの方がいたんですよ。僕と先輩が電車で移動している時に、その人とたまたま会ったんですよね。それで挨拶をしたら『2人とも試合が近いよね? ポイントは相手に打撃が効いて怯んでいる時に、仕留めていい瞬間と仕留めちゃいけない瞬間がある』って言われたんですよ」

──電車の中でアドバイスされたんですね。

「はい。『相手の目が死んでいたら殺しに行け。でも、相手の目が生きていた場合、仕留めに行くと逆に返り討ちに遭うから、相手の目が死んだ時に仕留めに行け」と僕と先輩にアドバイスしてくれたんです。それで解散する時に、先輩と『いいことを聞いたね。相手が中途半端に生きている時に仕留めに行ったら逆にやられちゃうもんね。俺らも試合ではそこを気をつけていこうか』って言っていて。それなのに、その次の試合で先輩は相手の目が生きている状態で突っ込んじゃって、案の定バコーンと失神KO負けしちゃったんです。それで試合後に先輩から『相手の目が生きている時に行くなよって、あの時に言われた通りだったわ…』と言われて。で、僕は僕で昇侍選手とやった時に同じように突っ込んでいって一発でやられてしまって。今度は僕が先輩に『全然目が死んでなかったです』と言ったのは忘れられないですね。2人とも同じような散り方をしてしまって、それは今でも教訓にしています。その後はそれを学習して勝ち続けましたけど、忘れられない思い出ですね」

──なるほど。渡慶次選手とは年齢は離れていますけど、同じように格闘技を学んできた部分があるんですね。その一方で、お2人とも社会貢献活動もされているじゃないですか。その部分は先輩の背中を見て、鈴木選手も始められた感じなんですか?

「そうです。先輩がやっているのを見て始めました。最初は先輩が教えてくれて、先輩はこのスタイルでやるんだなと。でも、いつまでも先輩の真似ばかりしてちゃ超えられないというか、オリジナリティが出ないままで終わるんで、先輩から学んだことを継ぎつつ、僕は僕のスタイルで格闘技を通して社会貢献をやっていこうと思って、今はやっていますね」

──それは鈴木選手が渡慶次選手の格闘技に対する姿勢を見て、学んだことですか?

「最初に先輩がそういう活動をやっているのを見た時に、格闘技以外でもこういう動きができるんだなと思ったんです。格闘家はただリングで暴れて、リングを降りたら不道徳なことをしている人たちが非常に多い。それを見ていたら、将来子供たちがそういう格闘家にはなりたくねえだろうなと思うじゃないですか。僕も人間ですから全てがいいわけではないですけど、せめて格闘技に携わっている時だけはみんなのヒーローでいたい、みんなにヒーローみたいだなと思ってもらえるように頑張ろうと思ったんですよ。まあ僕もプライベートの時は羽目を外すこともあるので、そこは変なフィルターをかけて見ないでほしいですけどね(笑)」

──分かりました。今回の試合は公式戦ではないですが、どんなものを見せたいと思っていますか?

「先輩とは最初で最後の戦いなので、『まあ任せてくださいよ』と思わせる試合をしたいですね。僕もまだ若者なので『若者の俺たちが次の新しい時代を築いていくんでサポートしてください、見守っていてください』と思わせたいです。逆に先輩が『俺まだ行けるかも』とか『もうちょっとやっちゃおうかな』と思わないようにしなきゃいけないですよね。『もういいよ。これから頼むよ』と思わせて、しっかり引導を渡せるような試合ができればなと思っています。試合時間も2分2Rと短いですし、第三者から見たら引退の一つの形式に過ぎないと思います。僕と先輩のストーリーを知らない人が見たら、形だけラウンドをやって終わったなと思われちゃうし、響かない人には響かない。でも、先輩と僕にとっては、たとえエキシビションでも選手として一緒に過ごしてきた時間の最後にあたるんです。もうこの試合が終われば同じ選手としてランニングに行くこともなければ、スパーリングをしてお互いを高め合うこともないし、先輩に嫉妬したり、やり返してえと思うことも、この試合を境にできなくなる。そう思うと僕にとっては凄い重い試合になるんで、ファンの人たちにもその気持ちをちょっとでも自分に置き換えて見てほしいです。短い時間ですけど、僕にとっては長く感じられるような試合になると思います」

──それにプロとしてやるからには中途半端な試合にはしたくないですよね。

「僕は思いっきり受けようかなと思います。ディフェンシブにポイントアウトしても面白くないんで、先輩の最後のパンチを受けようかなと思います」

──それと、今回はKNOCK OUTの沖縄初上陸の大会ですけど、それについてはどのように思いますか?

「KNOCK OUTは初期から知っているので、沖縄とか地方大会をこんなに早く実現できたんだと思うと、今のKNOCK OUTの求心力を感じますね。落ちていく団体もありますけど、逆にKNOCK OUTは急成長しているなと実感します。『みんなが認める立ち技最強はKNOCK OUTだよね』という日も、そう遠くないような気がしますね。だから今後はONEとか、そういった海外の団体がライバルチックな存在になっていくんじゃないですか。国内の他団体は、もうついてこれないぐらいの圧倒的な差がここ数年で出ると思います。それだけこの短期間での求心力は凄いし、色んな団体の選手がドンドンKNOCK OUTに来ているじゃないですか。他団体の選手が来たいと思えるような団体にもうなっているんですよ」

──その求心力が増した一つの象徴的な出来事が、今回の沖縄大会の実現だということですね。

「はい。それに沖縄大会が成功すれば、沖縄の選手も刺激を受けて、『俺も出たい』ってなると思うんですよ。沖縄の人にとっては格闘技を目指すきっかけにもなると思うし、多くの人に夢を希望を与えているんじゃないかなと、僕は見ていますね」

──分かりました。ところで、鈴木選手は今回の試合が復帰戦になりますが、怪我の具合やコンディションはいかがですか?

「コンディションに関しては当日見てもらえればって感じですね。正直、数字を出せるほどリングの上には立っていないですけど、ベストなコンディションでリングに上がりますよ。それを含めて楽しみにしていてほしいですね」

──そして今後のことなんですけど、RIZINでの試合が中心になるとは思うんですが、どんなことを目標にして戦っていきたいですか?

「もちろんチャンピオン返り咲きです。それ以外はないです。そうなるためにはみんなが納得できるような試合内容とスパンで試合をしていかなきゃいけないと思っています。怪我は治すことは時間がかかる部分なんですけど、皆さんを待たせた以上の試合を見せなきゃもう死ぬと思っているんです。格闘技界は死ぬか生きるかの業界なんで、僕は死を選ばずに生きる方を選びます。だから、その気持ちが嫌でも試合に出ると思うので、楽しみにしていてほしいですね」

──分かりました。では、最後に改めてファンにメッセージをお願いします。

「僕がジムに入会してからの先輩とのストーリーの最後を飾る試合だし、思いが凝縮された最後の戦いなので、皆さんにも楽しみにしていてほしいです。それにこの試合を見てくれれば、僕の今後の試合のイメージもつくと思います。ある意味、未来を全て想像できるような試合をお見せしますよ。先輩の素敵な未来、僕の素敵な未来、今後待っている未来にワクワクできるような試合を見せます。だから、皆さん、当日は応援をお願いします」

 


プロフィール
鈴木千裕
生年月日:1999年5月14日生
所属:KNOCK OUTクロスポイント吉祥寺
出身:東京都三鷹市
身長:175cm
戦績:13戦12勝(10KO)1敗
MMA戦績:20戦13勝6敗1NC
初代KNOCK OUT-BLACKスーパーライト級王者
第5代RIZINフェザー級王者